JFEテクノリサーチは、液体アンモニア環境材料評価試験設備を新たに導入し、各種産業用材料を対象に液体アンモニア環境下における評価試験サービスの受託を開始した。
JFEテクノリサーチは2025年7月1日、液体アンモニア環境材料評価試験設備を新たに導入し、各種産業用材料を対象に液体アンモニア環境下における評価試験サービスの受託を同日に開始したと発表した。
アンモニアは、燃焼時にCO2を排出しない他、液化しやすく高いエネルギー密度を持つ。そのため、火力発電所向けの混焼/専焼燃料、船舶用エンジンの代替燃料、水素の輸送/貯蔵媒体、各種産業用プラントの熱源として利用拡大が見込まれている。
しかし、アンモニアは強い腐食性を持つ。そのため液体状態では、鉄鋼材料や銅合金などに対して応力腐食割れ(SCC)を起こすリスクが高い上に、微量の水分や酸素が存在するとSCCの促進を招く可能性がある。低温環境での材料靭性の低下ももたらす。
アンモニアを安全かつ効率的に取り扱うためには、液体アンモニア環境下における各種材料の特性や耐久性などを正確に把握し、適切な材料選定や設計指針の確立を行う必要がある。
そこでJFEテクノリサーチは、鉄鋼業で培った材料評価の知見を基に最新の評価試験設備を導入し、液体アンモニア環境での材料挙動を適切に評価する技術を確立した。
今回JFEテクノリサーチが導入した液体アンモニア環境材料評価試験設備の特徴は、実環境を精密に再現する制御性と、多様な評価手法を組み合わせて総合的に材料を評価できる点だ。腐食反応を促進あるいは抑制する物質として、酸素やCO2、水の添加も可能で、電気化学測定機器と電極を用いた試験片への電位付与にも対応している。
同社は、液体アンモニア環境材料評価試験設備を導入することで、「SCC試験」「浸漬試験」「電気化学測定」「環境因子影響評価」といった多様な評価試験を行えるようになった。
SCC試験は、液体アンモニア中で試験片に応力を付加し、4点曲げ試験やU字曲げ試験などによるSCC感受性を評価する。浸漬試験は、長期間の液体アンモニア環境での暴露による外観と質量の変化、腐食生成物の分析が行える。電気化学測定は腐食電位や分極挙動を計測することで腐食メカニズムを解明できる。環境因子影響評価は、温度や圧力、不純物(水分、酸素、CO2など)が材料劣化に与える影響を定量化する。
なお、採用した液体アンモニア環境材料評価試験設備の試験セル設計容量は3リットル(l)で、試験圧力は大気圧〜2.0MPaとなる。試験温度は−35〜+50℃で、添付ガスは窒素、空気、酸素、添加物は、CO2、水となる。
また、JFEテクノリサーチは今回の設備導入と評価技術の確立により、液体アンモニアの製造や輸送、貯蔵、利用の各段階で利用される各種材料の課題解決につながるデータも取得できるようになった。
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