QSTと東芝は、両者が製作した世界最大級の超伝導トロイダル磁場コイルについて、核融合実験炉「ITER」の建設サイトにおいて実際の運転環境を想定した極低温環境で通電試験に成功したと公表。この成功により、ITERの運転開始に向けて大きく前進した。
量子科学技術研究開発機構(QST)と東芝は2026年8月25日、両者が製作した世界最大級の超伝導トロイダル磁場コイル(TFコイル)について、核融合実験炉「ITER」の建設サイトにおいて実際の運転環境を想定した極低温環境(−269度)で通電試験に成功したと発表した。TFコイルは、プラズマを閉じ込めるための強力な磁場を発生させる最重要機器の1つだ。
ITERとは、日本、欧州、ロシア、米国、中国、韓国、インドによる国際協力の下、核融合実験炉の建設および運転を通じてフュージョンエネルギーの科学的/技術的実現可能性を実証するプロジェクトを指す。現在、フランス南部サン・ポール・レ・デュランスの建設サイトでは、運転開始に向けた主要機器の組み立てが着実に進められており、各国が担当するITER機器の製作も順調に進展している。
ITERの運転開始に向けて、電源装置および冷却プラントとTFコイルを連携した試験を行うことにより、システムとしての信頼性を向上させることは重要だという。
今回の試験では、ITER国際核融合エネルギー機構(ITER機構)と協力してTFコイルを室温から極低温まで冷却し、超伝導状態になることや、超伝導状態で初めて1万アンペアまでの大電流を安定して通電することを確認した。
これは、TFコイルとして初の実証事例だ。これにより、ひずみに対して敏感なニオブスズ超伝導導体を用いて大型コイルを製造する方法の妥当性を確認した。また、極低温環境での安定した運転を確実にするために必要な情報であるジョイント部の抵抗発熱量および極低温下における冷媒の流動特性を取得し、いずれも設計時の想定範囲内の値であることを確かめた。さらに、極低温への冷却や1万アンペアの通電による冷媒の漏えいなどの不具合はなく、TFコイルの健全性が明らかになった。
同試験の実施に当たっては、QSTから派遣されたTFコイル技術担当者が、TFコイルの製作で培った知見を基にITER機構と協力し、試験計画の策定を主導するなど、その実現に貢献した。
今回の成果は、日本がフュージョンエネルギー開発において、世界最高水準の大型超伝導コイル基盤技術を有していることを示す。なお、同試験は、ITER超伝導コイルシステムの統合試験運転(コミッショニング)に向けて、運転手順の確立、運転員の訓練、課題の抽出によるリスク低減に貢献するものだという。
核融合発電とは? 優位性や安全性などの基礎を解説
経済的な核融合発電はどうすれば実現できるか?
DXの先を見据えたQXに取り組む東芝 量子社会の実現に向けた“痛みを伴う歩み”
東芝が再興計画を発表、繰り返してきた計画未達の悪循環から抜け出せるのか
自動車に不可欠なモーターとパワー半導体、東芝の戦略は
ローム東芝三菱電機の半導体事業統合、シナジー創出では「工場再編」が議題に
従来の枠組みを超えた共創が重要に 人とくるまのテクノロジー展2026の狙いとはCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
素材/化学の記事ランキング
コーナーリンク