東芝が、2024〜2026年度の新規中期計画となる「東芝再興計画」を発表。同社の構造的課題の根本的な解決に向け、2024年度中に固定費の削減を中心とする損益分岐点の引き下げで収益力を強化し、2025〜2026年度に中長期的な成長に向けた道筋を付ける。
東芝は2024年5月16日、東京都内で会見を開き、2024〜2026年度の新規中期計画となる「東芝再興計画」を発表した。同社の構造的課題の根本的な解決に向け、2024年度中に固定費の削減を中心とする損益分岐点の引き下げで収益力を強化し、2025〜2026年度に中長期的な成長に向けた道筋を付ける方針。2026年度の目標は、営業利益率(ROS)10%とフリーキャッシュフロー2000億円を掲げ、固定費率は2023年度比で5ポイントの削減を目指す。2026年度のROS10%は通過点であり、2027年度以降さらに全社の収益性を高めていきたい考えだ。【訂正あり】
同社は2023年12月、日本産業パートナーズ(JIP)をはじめとする国内企業を中心とした企業群のTOB(株式公開買い付け)により株式を非公開化している。これに併せて、株式非公開化後の新たな経営体制も発表しており、同社 社長執行役員 CEOの島田太郎氏がトップを継続して担う一方で、JIP 副会長を務めた池谷光司氏が副社長執行役員に就任することが決まっていた。今回の会見は、島田氏と池谷氏が登壇して行われた。
東芝再興計画の主軸になるのは、不正会計などの問題を起点に2015年度以降の東芝を悩ませ続けた経営の混乱によって低下した収益力の強化だ。2024年度は固定費の削減などによって損益分岐点を引き下げて企業体質の筋肉質化を進める「溜めのフェーズ」(池谷氏)に位置付けられる。そして、2025〜2026年度は2027年度以降の中長期的な成長に向けて「伸ばすフェーズ」(同氏)となり、筋肉質化で生み出した経営リソースの強化分野への投資も行いつつ、ROS10%という目標の達成も目指す。
東芝の収益力がどれだけ低下しているかについては、「東芝Nextプラン」などの中期経営計画を進めてきた2018年度以降の営業利益の推移を示す形で振り返った。東芝Nextプランでの2023年度の営業利益は3500億円を見込んでいたが、2023年度決算の営業利益は399億円にとどまった。計画との差が発生した要因は、売上高/限界利益率が50%、固定費が30%、引当金が20%となっている。池谷氏は「これまでは蓋然性の低いアグレッシブな計画策定が行われ、高リスクな案件獲得や拡大前提で高止まりした固定費により計画未達が発生してきた」と指摘する。
東芝再興計画は、これまでの中期経営計画の失敗を糧として立案されたもので「計画の蓋然性向上」「固定費の抜本的削減」「損失管理の高度化」の3本柱から成る。2026年度の連結業績見通しは、売上高が2023年度比14%増の3兆7500億円、固定費率が同5ポイント減の28%、営業利益が同9.5倍の3800億円で、目標数値のROSは10.1%となる。
ここで問題になるのが、2023年度に営業利益399億円、ROS1.2%という足元の業績と、東芝再興計画で掲げる目標の大きな乖離(かいり)だ。しかし、2023年度の営業利益は、HDDや発電システムで発生した製品保証引当金(368億円)やプロジェクト案件コスト精査(308億円)などの計上前であれば1484億円であり、ROSは4.5%となる。「これが現在の東芝の稼ぐ力であり、これをベースに東芝再興計画の3つの施策を着実に進めれば、ROS10%は十分に達成可能だ」(池谷氏)という。
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