ABtCのプラットフォーム活用事例として、蓄電池のカーボンフットプリント(CFP)の算定/伝達サービスがある。同サービスは欧州電池規制に対応するために、ウラノス・エコシステムを活用してトレーサビリティー管理する“業界協調の共通プラットフォーム”だ。
藤原氏は「欧州で電動車を販売するためには、電池規制によってサプライチェーン全体でCO2排出情報を集めて集計しなければならない。自動車メーカー(OEM)側から見ると、直接契約しているサプライヤー(Tier 1)は把握できても、さらにその先の情報(Tier 2、Tier 3など)をどのように集めるのかという課題が存在している。この課題解決をそれぞれの自動車メーカーがバラバラのやり方で進めてしまうと、サプライヤーは自動車メーカーごとに異なるデータや計算方式を用意する必要があり、大混乱が起きてしまう。このような事態を防ぐために、業界協調の共通プラットフォームとして構築した」と強調する。
具体的な仕組みとしては、下記図の一番上のアプリケーションレイヤー(CFP算定ツール)において、「一定のセキュリティ基準や認証を満たしたアプリケーションであれば何を使用しても良い」という方針で運用している。
インタフェースや基本的な部分については、ウラノス・エコシステムをはじめとした経済産業省が整備した標準的なコンポーネントや運用ルールを活用している。この部分を支えるために、自動車業界固有のルールや合意事項を実装した連携サービスを組み合わせてシステムを構築している。
このような設計にすることで、各企業が安心してデータのやりとりができる。また、業界の慣習や地域/産業によって違いがある場合も、データ主権をしっかりと守りながら価値を発揮できるシステム構成になっている。
ABtCは欧州の電池規制を受け、蓄電池のカーボンフットプリントのトレーサビリティーを管理するサービスを立ち上げたが、現在は他の課題の解決を目指す取り組みも進めており、大きく分けて6つのプロジェクトが進行している。
2026年の4月には、「半導体DPF(半導体データプラットフォーム)」を商用サービスとして展開している。これは、近年の半導体不足に対応するために有事の影響を可視化して、レガシー部品の新陳代謝を目指す仕組みとなっている。半導体業界と自動車業界が議論を重ねて、双方にメリットのあるデータ連携プラットフォームとして構築している。
同プラットフォームを活用することで、自動車業界側は供給リスクのある半導体の選定の際に、半導体メーカー側から提供される確かな情報に基づいて判断できる。一方、半導体業界は情報を適切に開示/共有することで、「古い半導体製品がグローバルモデルの自動車で使用されているため、生産を終了できない」といったミスマッチを解消できる。
「このように、業界間をつなぐデータプラットフォームを構築/共有することで、ミスマッチを解消し、ひいてはそれが日本産業の競争力強化にもつながる。このような考えの下、この半導体DPFを実装した」(藤原氏)。
その他の実装中の取り組みとして、「自動車LCA(ライフサイクルアセスメント)」と「電池パスポート」にも力を入れている。
自動車LCAは自動車1台のライフサイクル(原材料調達から製造、使用、廃棄、リサイクルまで)で、どれだけのCO2を排出するのかを算出する取り組みだ。同取り組みについて、現在は鉄鋼やアルミニウム、プラスチックなどの素材業界も含めて200以上の企業が実証に参画しており、自動車産業の枠組みを大きく超えた“異業種間でのつながり”が進んでいる。
一方、電池パスポートは、電動車のバッテリーに使用されている高価で希少な資源を有効に活用するために、製造から組み立て、使用、リユース、リサイクルまでの情報を追跡して確実に把握/管理できるようにする取り組みである。こちらも業界を挙げて実証を進めている。
藤原氏は「自動車産業は非常に裾野が広く、極めて多様な産業とつながって初めて成り立つ産業だ。共通の課題解決に向けて他の企業と一緒に進めていくとなると、『データをどのようにつなぎ、プラットフォームをどのように構築/運営していくか』というのは、もはや遠い未来の話ではなく、まさに目の前にある現実的な課題である。われわれとしては、課題に共に立ち向かう仲間と一緒に、これまでに培ってきたノウハウを共有して実証実験を実施し、新しいプラットフォームの構築を共に進めたいと考えている」と抱負を述べた。
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