電池サプライチェーン協議会は「CEATEC 2025」で「日本版電池パスポート」の進捗状況などについて紹介した。
電池サプライチェーン協議会(BASC)は「CEATEC 2025」(2025年10月14日〜10月17日、幕張メッセ)に出展し、「日本版電池パスポート」の進捗状況などについて紹介した。
BASCは2021年4月に電池のサプライチェーンにおいて健全な発展と国際競争力の強化を図るために設立された団体だ。メンバーは、材料メーカーから自動車メーカーまでを含むことが特徴で、電池サプライチェーンにおける業界の共通課題や、業界間での調整が必要な事案について検討を進めている。
共通課題として取り組む1つの例が、電池サプライチェーン情報の連携だ。その背景として、欧州などで電池に関する情報開示についての規制がある。この欧州電池規制は2023年に発効されたものだ。電池に関するカーボンフットプリント情報の開示を含む、材料の調達から回収、リサイクル、再利用までの一連のプロセスの可視化が求められている。デューデリジェンス義務の適用開始は2027年8月に延期されたが、適用されると、欧州で販売される全ての電動車について、車載電池のライフサイクルに関する情報開示が義務付けられることになる。
これらに対応するため、電池サプライチェーン協議会、自動車メーカーや日本自動車部品工業会が2024年5月に「自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター」(ABtC)を設立し、自動車や蓄電池サプライチェーン上の企業間で安全、安心にデータ連携を行える「日本版電池パスポート」として、仕組み作りに取り組み始めている。
「日本版電池パスポート」は、経済産業省、情報処理推進機構(IPA)などが推進するデータ共有アーキテクチャである「ウラノス・エコシステム」を活用したもので、自動車や蓄電池のサプライチェーン企業間でデータ連携を行える「トレーサビリティサービス」はその第1弾ユースケースとなる。
「日本版電池パスポート」については、サプライチェーンの部分ごとに検証が進められており、2024年度はEV(電気自動車)の新車における原材料製造、電池製造、車両製造などのサプライチェーンでデータ連携が無事に行えるかの検証を実施した。2025年度は、中古車における電池情報の管理、共有の仕組みを検証しているという。「リサイクルやリユースについては別で共有の仕組みを検証しており、バリューチェーン全体でも多くの部分の検証が進みつつある」(担当者)。
ただ、課題となっているのが、新車として出荷した後の情報の管理だ。「エンドユーザーのもとでの車両の走行情報も、電池の状況を把握するには重要な情報だが、個人情報にも深く関わる領域で、どういう形で進めるべきか考えなければならないポイントが多い。ただ、完全な合意形成を待てば時間ばかりがかかるので、部分的にもニーズがある領域からリリースしていきたい」(担当者)としている。
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