70兆円の悪質模倣品市場から自社製品を守れ パナソニックが取り組む模倣品対策知財ニュース(1/3 ページ)

パナソニックは世界規模で増え続けている模倣品対策について説明した。グローバルで70兆円にも及ぶ模倣品による損失が発生している中、パナソニックではその被害を防ぐため、さまざまな取り組みを進めている。

» 2025年10月15日 07時30分 公開
[坪田澪樹MONOist]

 パナソニックは2025年10月3日、東京都内とオンラインで記者会見を開き、パナソニックグループの模倣品対策の取り組みについて説明した。世界規模で模倣品被害が増えている中で、同社はさまざまなブランド保護の取り組みを進めている。

模倣品が世界に与える影響

パナソニックのアイロンの模倣品。箱のロゴは「Pearlsonic」となっている パナソニックのアイロンの模倣品。箱のロゴは「Pearlsonic」となっている[クリックして拡大]

 上の写真は、「Pearlsonic」というパナソニックと似たようなロゴを持った、家庭用アイロンの模倣品である。外箱はロゴが微妙に異なるだけで、遠目で見ると正規品だと勘違いしてしまう。製品についても、本体に刻まれたロゴが違うだけで、外観はほとんど変わらないように見える。

模倣品(左)と正規品(右)[クリックして拡大]

 しかし、実際の中身については模倣品の方は正規品と比べるとスカスカで、正しい機能を実現する部品の多くが搭載されておらず、重りを入れて重量をごまかしている。例えばアイロンの温度上昇を防ぐ温度ヒューズは適切なモノが取り付けられておらず、摘発した模倣品をパナソニックの技術部門でコンセントに挿したまま放置した結果、最終的に発火したという。パナソニックIPマネジメント 商標・意匠部 コーポレートブランド課の青木久枝氏は「実際に私もその場に居たが匂いと煙が発生し、これが一般の顧客の家庭で起きたら大変なことになると感じた」と語る。

パナソニックIPマネジメントの青木久枝氏。右手には発火した模倣品、左手には正規品を持っている パナソニックIPマネジメントの青木久枝氏。右手には発火した模倣品、左手には正規品を持っている

 例に挙げたアイロンの模倣品はミャンマーでの事例だが、これは氷山の一角にすぎず、世の中には無数の模倣品がはびこっている。国際機関であるOECD(経済協力開発機構)の統計によると、模倣品による被害額はグローバルで5090億米ドル、日本円に換算すると78兆円ぐらいの規模に及んでいる。

 模倣品を放置しておくとさまざまなリスクが発生するが、一番危険なのは安全性や生命のリスクが発生してしまうことだ。正規品は衛生的な工場で適切な原材料を使い製造しているが、模倣品についてはどんな材料が使われ、どこで作られているのかが全く分からないため、人体に影響を及ぼす問題が起こりかねない。また、実際に摘発した模倣品はそのまま使用ができないので、全てをごみとして廃棄をしなければならず、社会面/環境面にも影響を与えている。

模倣品によって引き起こされる問題 模倣品によって引き起こされる問題[クリックして拡大]出所:パナソニック
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