これらの被害が発生している中、パナソニックグループは模倣品の流通経路に応じた「買わせない」「作らせない」「売らせない」対策をしている。それぞれの場面で法律が絡む事案については、法律の改善を求めるロビー活動を他社と一緒に行っている。
特に近年ではSNSの普及により、模倣品の流通が1対1のリアル販売から1対複数のグローバル販売に広がり、政府当局や警察による摘発だけではスピードが追い付かない状況に置かれている。その中で、パナソニックグループでは、消費者が模倣品を買わなければ模倣品市場そのものがなくなるという仮説を立て、「買わせない」取り組みとして、消費者向け啓発活動を積極的に実施している。
パナソニックグループとしてはZ世代の若者をターゲットにして、将来の主要マーケット層になった際に模倣品を購入させないために、出前授業という形で中学校に赴いて実際の模倣品や動画を見せながら啓発活動を実施している。SNSの公式アカウントでも定期的に注意喚起をしている。パナソニックの公式webサイトでは、偽物を見分けるポイントやさまざまなパターンを紹介している。
またパナソニックグループはロビー活動として、日本で約300社が加入する団体「IIPPF(国際知的財産保護フォーラム)」に所属し、業界で一体となって模倣品対策に取り組んでいる。コロナ禍以降のオンラインでの模倣品被害の増加に伴い、IIPPFで啓発グループを設立して各社バラバラで行ってきた啓発活動を一斉に実施することで、社会に対して大きなインパクトを残し、模倣品に対する意識改革に取り組んでいる。
「作らせない」という上流の対策として、パナソニックグループは191の国と地域で「パナソニック」を商標として登録している。この権利を活用して各国の現地当局に模倣品の摘発/押収の協力要請をしている。中国では実際に自動ドアの部品を模造した拠点を摘発しているが、非常に劣悪な環境で作られていたという。
「売らせない」という中流の対策として、パナソニックグループはEC対策に力を入れており、100カ国ほどのECサイトを定期的に観察/監視している。その数は約1000個に及び、オンラインで偽物が販売されているのを発見した際は、ECプラットフォーマーに連絡をして削除申請をしている。税関対策も合わせて実施しており、現在では模倣品の流通経路になる重要な40の国と地域に絞り、税関職員に対してセミナーを実施している。
パナソニックがこれらの模倣品対策を徹底する理由について青木氏は、「パナソニックの経営理念でもある『社会生活の改善と向上』のため、社会をよりよくしたいという思いで取り組んでいる。模倣品を買わないことで安全が確保され、正しく活動をしている企業に利益が渡り、環境破壊も防止できる。そして、世界中で知的財産が守られることで、新しいイノベーションが生まれて結果的に社会課題も解決できる」と模倣品対策の重要性を訴えた。
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