被ばくリスク減らすX線透過部材を開発、照射量を8%低減材料技術

東レは、X線検査での被ばくリスクを軽減する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製部材を開発した。画像精度を落とさずにX線照射量を8%低減できるのが特徴だ。

» 2026年07月10日 07時15分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 東レは2026年7月9日、従来比同等以上の画像精度を確保しつつ、X線照射量8%低減を可能にする、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のX線透過部材を開発したと発表した。

 今後、マンモグラフィなどの撮影台やカセッテといったX線検査装置への展開を見据え、実用化に向けた検討を進めていく。

形状によらず密度のばらつきを抑制

 X線検査は、人体を透過したX線を検出して内部構造を画像として可視化する技術で、病気の早期発見に有効だ。一方、医療被ばくのリスクも伴うため、照射量を増やさずにノイズの少ない鮮明な診断画像を可能とする技術が求められている。

 なお、国内では医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)がハブとなり、放射線診療における被ばく線量やリスク評価などに関するデータを収集し、患者の放射線量を最適化するための指標として診断参考レベル(DRL)を公表している。

 X線検査装置の受光部には、軽量かつX線透過性に優れたCFRP製の保護部材が適用されているが、照射量を増やさずに鮮明な診断画像を取得するためには、この保護部材のX線透過性のさらなる向上が必要だ。

 透過性向上の手法として、CFRPスキンと多孔質体コアからなる低密度なサンドイッチ構造体が有効であり、検査装置への適用が検討されてきた。しかしながら、多孔質体の密度ばらつきや保護部材の形状に起因して、透過X線の強度分布のムラにより、診断画像にノイズが発生する可能性があるなどの課題もあり、照射量低減と診断精度向上の両立が求められていた。

 そこで東レは、独自の多孔質体であるCFRFのサンドイッチ構造体において、緻密な複合化設計を確立することで、低密度と高剛性を両立させるとともに、形状によらず密度のばらつきを抑制した。CFRFとは、炭素繊維の短繊維が3次元ネットワークを形成し、繊維同士をバインダー樹脂が接着することで、内部に空隙を有した構造を持ち、軽量でありながら剛性に優れる東レ独自の多孔質材料だ。

サンドイッチ構造体のイメージ サンドイッチ構造体のイメージ[クリックで拡大] 出所:東レ

 このサンドイッチ構造体を適用した保護部材を、東京都立大学 健康福祉学部 放射線学科 准教授の根岸徹氏が臨床条件下で評価した結果、検出量子効率(DQE)が従来CFRPに対して約6%向上することを確かめた。これにより、X線照射量を8%低減しても同等以上の鮮明な診断画像の取得が可能となる。マンモグラフィなどの撮影台やカセッテといった検査装置に同部材を用いることにより、医療被ばくのリスクを低減しつつ、診断精度の向上が期待できる。

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