開発現場で必要な課題をジャクエツに提供するのは、幼稚園/保育園だけではない。
ジャクエツが2024年度にグッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)を受賞した「RESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクト」は、ジャクエツの「あそび」を追求する姿勢が生み出した集大成だ。
RESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクトは「社会からよく見えず、遊びの場も十分に提供されていない」という医療的ケア児の通所施設を運営する医師との出会いがきっかけになった。
まずは、医療的ケア児の「あそび」について知るところから始め、そして「医療的ケア児は遊べない」のではなく「遊べないだろう」という大人の先入観が「あそび」を引き出す機会をなくしていることに気付いたという。そして、当事者、家族、研究者、医者、デザイナー、製造現場の技術者など、さまざまな人が一緒になって、いろいろな体験をしながら、医療的ケア児と健常児に共通する「楽しい」という感覚を見いだし、誰もが楽しめる遊具の開発に結び付けた。
ジャクエツは、「あそび」ということを真剣に考え、高品質な環境のデザインを通じて、誰も取り残さない地域や社会の未来を考えている。「あそび」を起点にその可能性を広げていこうという取り組みが、ジャクエツにとっても新しい可能性をもたらしている。
ジャクエツの取り組みは、遊具の企画や製造業としての市場の拡大にも効果を生み出している。2025年に世界最大級のインテリア見本市である「ミラノデザインウィーク」に初めて出展した際、ジャクエツの歩んできた方向性の正しさを認識したという。ミラノでは、遊具の出展を通じて「あそびの場」を提供したことが、来場者の関心を引き付け、言葉も通じない子どもたちが多く集まった。敦賀で育んだ子どもたちや「あそび」への思いが世界に通じることを体感できたという。
欧州のブランドは、それぞれ、そのブランドのストーリーを大事にしている。ジャクエツには、もともと若狭と越前の双方にまたがり、双方の結節点として発展してきた敦賀の街そのものを体現する思いがある。敦賀において、地元の幼稚園を運営し、さらには、公設の保育園の設計から運営委託までを担うため、地元の子どもたちの誰もが知るジャクエツのロゴマーク「いぬはりこ」が欧州で認められた瞬間だ。
この経験を踏まえ、地元の企業と一緒に世界市場への進出を視野に入れ始めている。欧州市場の子ども遊具については、建築規制を含めて、厳しい規制がある。欧州市場に出ていくためには、欧州の規格に合わせることはもちろんだが、日本で培ってきた安全基準の価値をしっかり伝えられるようにすることが重要だ。そのために、日本国内の安全基準づくりにも力をいれている。安全性と遊びを引き出す力、双方が成り立って、ジャクエツの遊具の真価が発揮されるのである。
モノづくりから、コトづくり、そして、体験価値の提供、といった最近の流れで捉えていえば、ジャクエツは、もともと、遊具の開発や製造から「あそびの空間価値」の提供をする形へと発展を遂げてきた。そして、遊びという体験価値の提供を通じて、そこでのユーザーからの声をしっかりと吸収し、次の教具や遊具の開発につなげている。
こうしたユーザーの声を持っている強みと、その声をしっかりデータとして、会社全体が共有し生かしていることで、ジャクエツのイノベーションはどんどん進化を遂げているのではないだろうか。デジタルだけではないデータの持つ価値を最大限理解し活用することが、企業変革につながる。こういうD(データ)Xの姿を感じることができた。
1991年に東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。経済産業省では日本の魅力を発信するクールジャパン政策や、日本のモノづくり産業支援政策などを推進。特許庁時代には、商標や意匠を活用したブランディング戦略や、技術情報などをベースとした知財戦略を支援した。その後、石川県の副知事となり、デジタル化、グリーン化などに取り組んだ。2025年から政策研究大学院大学 特任教授、金沢工業大学 産学連携室 客員教授を務める。
1988年に九州大学大学院を修了後、三菱電機入社。研究所にてリアルタイムネットワークの研究開発に従事。また、名古屋製作所でCC-Link IEの開発やe-F@ctoryの事業企画などを担当。情報技術総合研究所長、FAシステム事業本部役員技監として研究開発を統括した。2023年から早稲田大学研究戦略センター教授。ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会(RRI)WG1共同主査(2022年度)、一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)理事などを務める。博士(工学)。
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