膨大な現場のデータを持ちX(Transformation)を進めるジャクエツだが、現場データから得たアイデアをすぐに試作製品化できる自社工場を持つことも強みだ。
工場は、ダイフク製の大型倉庫ラックがあり、多くの部品点数の在庫を抱え、フォークリフトがピッキングを行っている。多種の組み立て工程や塗装、さらには熟練技を要する遊具へのロープの編み込みなど、人手による多品種少量生産が中心となっている。ジャクエツの製品は、幼稚園や保育園の環境に合わせたカスタム製品が多い。中には、一品ものの大きな遊具などもあり、大型クレーンが工場の中で遊具を吊り下げていたりする。
その中で、工場を見ていて気になったのが、ロボットなどを使った自動化やデジタル化などをあまり積極的に進めていない点だ。
ジャクエツのWebサイト上にある製品カタログを見ると、バリエーションも含めると膨大な数の型番製品を保有している。これだけの製品群を抱え、社内生産のみならず、多くの協力会社、サプライヤーとともに商品の製造をするには、デジタル技術を活用した自動化などを進めているのではないかと考えていたが、実際には生産管理や工程管理の多くを人手によるすり合わせで行っているという。発注と出荷は汎用の基幹システムで管理しているが、その間の在庫管理、工程管理、出荷管理などは、全て人手で行う。
ただ、製造に関するデータの管理と共有については、設計図から製造工程、さらには安全性にかかる評価までのデータ管理を行っている。また、営業販売部門と製品企画部門の間では人事ローテーションがあり、ユーザーである各地の幼稚園/保育園との生の声のやりとりが、製品企画としっかり共有される仕組みが組み込まれている。こうした中での「生の声」という開発のアイデア(データ)は、人と人との間でしっかり共有される仕組みとなっている。
ジャクエツの取材の中で見えてきたのは、DXにおける変革は、必ずしもデジタルというツールを介したものではなく、「D(データ)」を介して行われるということだ。必ずしもデジタルデータだけではなく、ユーザーの声や社内でのコミュニケーション、ドキュメントに記入した文書も全て「データ」である。重要なのはこれらのデータをしっかりと活用して、価値を生み出すということだ。
その上で、開発および製造のそれぞれで、ユーザーの生声というデータを有することが、他社を寄せ付けない徹底的な強みとなっている。子どもたちの安全性を追求するというジャクエツの姿勢を共有し、現場に必要な課題を解決するための製品提供を行うために、全国の幼稚園/保育園が協力しているのである。「製品を売るために開発するのではなく、現場で必要な製品を開発している。ニーズがもともとあるものを作っているのだから、結果的に売れるのは当たり前だ」と徳本氏は強調する。
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