先ほど紹介した案件の話に戻ります。内容は、既存設備へ安全装置を追加するに当たり、安全装置が作動した際に既存設備の動力を遮断できるよう、ソフト側で対応してほしいというものでした。
そこで筆者は「内容は理解しました。まず、既存設備の電気ハードウェア(以下、ハード)図面を支給してください」と設備メーカーへ依頼しました。
すると設備メーカーからは、「いや、図面はないんです」という回答が返ってきました。設備メーカーの担当者としては、「図面なんてなくても、ラダー回路を変更すれば対応できるのではないか」というニュアンスで話されていました。
しかし、そもそもソフトは基本的にハードの仕様や性能を超えることはできません。いくら「○○してほしい」という要望があったとしても、まるで魔法のようなことは実現不可能なのです。
ソフト設計者は周りから見ると「PCで仕事をする人」という印象が強いためか、プログラムさえあれば仕事ができると思われていることがあります。しかし実際には、ハード図面がないとソフト設計者はいろいろな場面で困ることになります。ここでは2つのケースを紹介します。
1つ目は「そもそもシステム的につながっているのか確認できない」という点です。
これは住宅のブレーカーに例えるとイメージしやすいと思います。皆さんの家庭にあるブレーカーは、自分が住んでいる住宅の範囲で電力を遮断しますし、ご近所さんの住宅のブレーカーは、その住宅の範囲で電力を遮断します。至って当たり前の話ですが、これが「システム的につながっている」というイメージです。
一方で、「皆さんのご自宅のブレーカーから、ご近所さんの住宅の電力を遮断できると思いますか?」と聞けば、「そんなことできるわけないでしょ!」と思うはずです。なぜなら、システム的につながっていないからです。
これと同じで、安全装置と設備がシステム的につながっていなければ、いくらソフト側で工夫したとしても動力を遮断することはできません。
このことを踏まえると、ハード図面がない状態では「そもそも論」の部分を確認できませんので、「ソフトで実装できます」と約束することはできないのです。
もう1つは、「安全装置が作動した場合の流れが分からない」という点です。
「ライトカーテンが遮光された際に設備の動力を遮断したい」という場合、ライトカーテンの配線がどこにつながっているのかによって、ソフトの実装方法は大きく変わってきます。
一般的に電気機器の配線には「電源線」と「信号線」の2種類があります。このうち信号線については、「どのような種類の信号線なのか」と「どこにつながっているのか」が重要です。
例えば各信号線が、
によって、ソフト設計者の作業内容は大きく変わってきます。
一般的にこうした情報は電気ハード図面に記載されています。そのため、電気ハード図面がなければ、ソフト設計そのものをスタートできないのです。 (次回へ続く)
りびぃ
「ものづくりのススメ」サイト運営者
2015年、大手設備メーカーの機械設計職に従事。2020年にベンチャーの設備メーカーで機械設計職に従事するとともに、同年から副業として機械設計のための学習ブログ「ものづくりのススメ」の運営をスタートさせる。2022年から機械設計会社で設計職を担当している。
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