2027年度からは、2030年度を最終年度とする第三期中計が始まる。2026年5月に新ブランドとして「Syncusteer」を発表したばかりのステアバイワイヤに関しては自動運転、BEV(バッテリー電気自動車)の普及とともに2030年以降に急速に需要が高まると見ており、高い信頼性や高度な制御技術などを強みとしてデファクト化を狙う。
不確実性が増す中で、今後は変化に対応できるレジリエントな生産ラインを構築する。従来のような大量生産を前提とした大規模投資/長期回収型のモデルから脱却し、投資を抑えつつ変化に柔軟に対応できるシステムを目指す。ライン1本当たりの生産能力(ライン規模)を小さく設定し、必要に応じてその小規模ラインを複数並べて生産量の増減に対する柔軟性(流動性)を高める。設備の汎用化をさらに進め、複数の工法や異なる製品に対応できるようにする。製品ごとの専用部分を最小限(治具やツーリングなどの変更程度)に抑えることで、モデルチェンジ時の設備投資を大幅に抑制する。
ソリューションプロバイダーへの転換を図るため、2026年度は工場ソリューション事業を推し進める。具体的には、機械の単体売りにとどまらないターンキービジネス化を通じたバリューチェーン拡大を目指す「設備」、デジタルとTPS(トヨタ生産方式)を武器に、モノづくり現場の自動化の課題を解決する「自動化プロセス」、稼働状況の可視化や保全サポートなど生産現場におけるデータに基づくソリューションを提供する「工場マネジメント」などを展開する。
「われわれは自動車部品メーカーであると同時に、工作機械メーカーでもあるという特徴的なポジションにいる。工場に必要な設備やデバイスを提供するメーカーであり、自社工場でモノづくりを行う立場にもある。この強みを最大限に発揮する。自社の工場をリアルなショーケースとして展開したい」(近藤氏)
ソリューションプロバイダーの先駆けとなっているのが北米のADC(AutomationDirect.com)事業だ。
中小企業のシステムエンジニアなどをターゲットとし、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)やHMI(表示器、ヒューマンマシンインタフェース)といった自社の中核製品をハンバーガーに見立て、他社製を含むケーブル、モーター、スイッチなどの周辺装置をサイドメニューとしてセットで提案/販売する「ハンバーガー戦略」を展開し、約15%という高い利益率を誇っている。「必要なものがワンストップでそろうため、合理性を好む米国の国民性に合っている」(山中氏)。物流センターの拡張や自動化といった先行投資を進め、さらに売り上げを拡大する。
会見では、軸受事業で競合となっている日本精工(NSK)とNTNの経営統合に関する発表についても出席者の質問に答える形で言及した。近藤氏は、「軸受の事業環境は大きく変化しており、中国の台頭やコスト競争力の激化などにより厳しい局面を迎えている。第二期中期経営計画では、ポートフォリオの変化を含めた“脱力”と“注力”を推進している。その軸をぶらさずに取り組みたい」と語った。
一方、山中氏は「うわさはあったので想定はしていた。今回、公表されたことでわれわれの軸受事業を一から見直すいい機会になった。いろんなリスク、もしくは機会があると考えており、タスクフォースチームを立ち上げて検討している。健全な危機感を持って対応したい」と話した。
ジェイテクトの売上高の事業別比率は、ステアリングや駆動部品などの自動車事業が7割、産機/軸受事業が2割、工作機械事業が1割となっている。
「今回の両社の発表は、われわれにとっても良い示唆、方向付けになるのではないか。軸受の要素技術がわれわれの事業のいろんなところで生きているため、軸受を大切にしていきたいという思いはある。ただ、それがどれくらいの“体格”なのか。われわれの生きる道、貢献できるフィールドをしっかり見定めたい」(近藤氏)
「日本精工とNTNは、汎用品軸受や産機、アフターマーケットの売上比率が高くわれわれと全く逆のビジネスモデルだった。われわれも産機、アフターマーケットの領域を拡大していきたいと考えた中で、それらがもともと強かった両社が一緒になろうとしているため、今後どうするべきか社内で議論している。ただ、日本精工とNTNが同じような業種で海外に多くの拠点を持つ中で、拠点の統廃合や業種の絞り込みも進んでいくと考えている。それに対してわれわれが勝てる領域はどこかを見極めて、飛び込んでいくしかない」(山中氏)
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