P2の成功は、ホンダのロボティクス開発を加速させる基盤となった。1997年にはP2をさらに小型化し軽量化を図った「P3」が登場。また、2000年にはより人間社会に溶け込みやすく、親しみやすい姿となった「ASIMO(アシモ)」が誕生した。
ASIMOは身長130cmで時速9kmの走行を実現し、片足でのケンケンや両足でのジャンプといった、複雑なバランス制御も可能にした。ASIMOは2022年3月をもって定期的な実演活動を終了したが、約20年間にわたって継続的な技術開発によるモデルチェンジを重ね、累計1万5000回以上の実演を行った。
本田技術研究所 統合研究センター エグゼクティブチーフエンジニアの吉池孝英氏は、「現在、ホンダでは人間型というロボットの形状そのものを完成させることは最優先事項ではない」と語る。全身のヒューマノイド開発にこだわるのではなく、より実用的な要素技術の社会実装へ重点を置いている構えだ。二足歩行研究で培ったバランス制御技術を応用し、自立して転倒を防ぐ二輪車技術「Riding Assist」や、歩行が困難な人の動作をサポートする「歩行アシスト」などの独自技術を展開してきた。
近年、ホンダが特に注力しているのが「多指ハンド」の開発である。人間の筋肉と腱の構造を模倣したワイヤ駆動方式を採用し、重量物となるモーターを前腕部に配置した。これにより、机上のコインをつまみ上げるような精密な動作と、人間の約2倍に相当する最大12kgの指先力を両立させている。
多指ハンド技術は、遠隔操作によって作業を代行するアバターロボットへの搭載を想定している。社内ではすでに、製造現場でのユースケース実装に向けたPoC(概念実証)を進めている。また、仮想空間でのシミュレーションとフィジカルAIを掛け合わせ、ロボットが汎用的な作業スキルを獲得するための研究開発も並行して進行中だ。
このようにホンダは、P2やASIMOの開発を通じて蓄積したロボティクスの知見を、足の移動機能から手の作業機能、さらには知能化技術へと発展させてきた。過去のヒューマノイドロボット研究で培われた技術資産は、形を変えながら実用的なソリューションへと応用され続けている。
本田技研工業 取締役 代表執行役社長の三部敏宏氏は、授賞式で次のように語った。
「今回のマイルストーン認定は、単なる過去の成果に対する称賛にとどまるものではない。無理だと笑われたものに対して決して諦めず、挑戦し続けた当時の技術者たちの執念や熱意は、現在、そして未来にまでも生き続けている。この技術の連鎖こそが、ホンダの存在意義だ。
われわれは今、人々を時間や空間の制約から解放するという壮大なビジョンに向け、再びたいまつを掲げて霧深い未来を照らそうとしている。未来の人たちが歴史を振り返った時、現在のホンダの新たな挑戦がマイルストーンであったと言ってもらえるよう、これからも歩みを進めていく」(三部氏)
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