世界初のフッ素フリーネガ型ArF液浸レジスト、AI半導体向け先端ノードに対応材料技術

富士フイルムは、フッ素由来の材料を一切使わずに、優れた酸反応効率と高い撥水性を両立させた「フッ素フリー」のネガ型ArF液浸レジストを世界で初めて(同社調べ)開発した。

» 2026年04月24日 06時15分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 富士フイルムは2026年4月23日、先端半導体の製造プロセスに用いられる環境配慮型の材料として、フッ素を含む原材料を使用しないネガ型のArF(フッ化アルゴン)液浸レジストを世界で初めて(同社調べ)開発したと発表した。

バラつきの少ない微細な回路パターンの形成も可能

 現在広く普及しているArF液浸露光向けのフォトレジストには、微細な回路パターンの描画に必要な酸を効率よく反応させる用途の他、ウエハー上の水残りによる欠陥を抑制するためにレジスト表面の撥水性を持たせる目的でPFASが使用されている。

 ウエハー上の水残りとはウエハー上に水滴が残ることで、レジスト膜への浸透やレジスト素材の溶出を誘発して欠陥の原因となり得る。PFASとは、ペルフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物およびこれらの塩類の総称を指す。近年、環境や生態系への影響懸念からPFASの使用規制の動きが進んでいる。

 PFASに限らず、自然環境で分解されにくいフッ素結合を持つ有機化合物全般について、フッ素を含む原材料を使用しない新規材料への関心が高まってきている。

 また、半導体メーカーの製造工程では、フッ素を含む廃液とそれ以外の廃液を分けて管理する必要がある。フッ素を含む廃液は高温での処理が必要となり、その分エネルギー消費量が大きくなるため、フォトレジストの原材料にフッ素を含む化合物を使用しないことで、廃液管理の効率化や廃液処理で使用するエネルギーの低減が期待できる。

 一方、富士フイルムはこれまでも、人体や環境への悪影響のリスクが懸念される物質の自主的な削減と代替に取り組んでおり、安全性が高い高純度有機溶剤を用いたNTI現像液を世界で初めて(同社調べ)開発したという。NTIはNegative Tone Imagingの略称で、NTI現像液は露光後に感光しなかった部分を現像液で除去して回路を作るネガ型の現像工程で使用される。

 さらに、半導体製造技術「ナノインプリントリソグラフィ」に適合する半導体材料として、PFASを含まないナノインプリントレジストも2024年4月に発売。2025年7月には、PFASフリーのネガ型ArF液浸レジストを開発した。

 今回、同社は、フッ素フリー新規材料のニーズの高まりを踏まえて、PFASに限らずフッ素を含む原材料を使用しないネガ型ArF液浸レジストを開発した。

 このレジストは、同社が銀塩写真の研究開発で培った機能性分子の設計技術に加え、フォトレジストなどの半導体材料開発で培った分子設計技術や有機合成技術、処方技術、解析技術を活用し開発したものだ。

 同レジストは、通常はフッ素を含む原材料を導入する必要があるフォトレジスト処方において、フッ素を含む原材料を導入することなく回路パターンの形成における優れた酸反応効率や、先端のArF液浸露光時の水残りを低減する高い撥水性を実現する。バラつきの少ない微細な回路パターンの形成も行える。

 なお、今回のレジストは、ネガ型のArF液浸露光向けのフォトレジストで、需要が拡大しているAI(人工知能)半導体の製造に使われる先端ノードに対応している。同社は現在、今回のレジストの顧客へのサンプル提供を開始しており、今後、顧客先での評価を経て、早期の販売を目指す。ArF液浸露光とは、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)を用いる露光手法で、現在最も普及している先端リソグラフィー技術だ。

 今後も、レジストのフッ素フリー化の技術やノウハウを、EUV向けをはじめとした他の先端レジストにも適用することで、先端レジストのフッ素フリー化を進めていく。

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