このような背景の中、パナソニック エナジーは“地球環境に貢献する企業”を目指してさまざまな活動を行っている。同社は、コスト効率の高いCO2排出の削減にはモビリティの電動化が最も経済合理性が高いと捉えている。「BEV(バッテリー電気自動車)を使用して3年間で約3万Kmを走った場合、ガソリン車と比較するとライフサイクルでのCO2排出量は削減に転じることが科学的な計算結果として出ている」(渡邊氏)。
パナソニック エナジーはリチウムイオン電池の生産拠点である北米工場の“質”の変化にも取り組んでいる。同社は2017年から、業界の中で先駆けて米国ネバダ州リノでリチウムイオン電池の生産を開始した。ネバダ工場における年間の電池生産量はEV約50万台分に相当し、1日で正極材向け材料を180t、負極材向けに80tを使い切る規模である。ネバダ工場の生産量は生産開始から3〜4年をかけて拡大し、現在は41GWh/年に達しており、生産におけるロス率も大幅に改善している。
米国カンザス州デソトにも工場を構え、2025年7月から生産をスタートした。同州始まって以来の巨大プロジェクトといわれており、地元の雇用創出に大きく貢献している。同社の北米地域における車載電池のシェアは36%に達しており、引き続き拡大していく市場の動向に合わせて事業を展開していく方針だ。
また、事業の拡大とともにCO2削減活動も実施している。電池のカーボンフットプリントについて、2030年度までに2021年度比で50%減を目標に掲げており、これまでに約20%の排出削減を達成している。同社は、コスト競争力のさらなる強化とCO2排出低減により、電池の低価格化および脱炭素化を加速させていく。そのために、低CFPのサプライチェーン改革やニッケル等の生産プロセス簡略化、将来的な市場拡大に対応するための電池人材の拡大/育成にも取り組んでいく。
技術面の取り組みでは、「安く/低CO2で」を実現するために、電池に使用するレアメタル比率の削減と電池の高容量化を目指す。パナソニック エナジーではニッケルの使用量を減らしながら電池容量を上げる材料技術の開発を進めている。渡邊氏は「材料開発としてはめどが立ってきている。容量を5%上げて、ニッケルはメタルコストでみると6掛けぐらいでできるような技術開発を進めていく」と述べる。
次世代技術を活用し、電池性能をさらに進化させていく。負極材シリコン膨張抑制の新技術による添加量増加などで、体積エネルギー密度が現状の800Wh/Lから900Wh/Lまで増加した次世代セルが出来上がりつつある。同社はここからさらなる容量アップを図るために、アノードフリー型リチウム金属負極を採用して1000Wh/Lを超える次々世代セルの開発にも挑戦していく。
パナソニック エナジーがハイニッケル正極材を実現した策と次のターゲットとは?
多様性を重視するパナソニック エナジーの「MIRAI奨学金」、1期生の進路は?
2028年度までに3倍に、パナソニック エナジーはAIデータセンター向け電源に勝機
車載用円筒形リチウムイオン電池モジュール/パック工場の建設協定に調印
米国商用EVがパナソニック エナジーの「2170セル」採用、今後は米国からの供給も
協業で使用済みリチウムイオン電池のニッケルをリサイクルCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
モビリティの記事ランキング
コーナーリンク