トカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」の直近の目標とは素材/化学メルマガ 編集後記

今回は那珂フュージョン科学技術研究所に設置されているトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」についてつらつら語っています。

» 2026年01月16日 12時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 この記事は、2026年1月16日発行の「素材/化学メルマガ 編集後記」に掲載されたMONOistの編集担当者による編集後記の転載です。

 読者の皆さん、新年明けましておめでとうございます。本年も素材/化学フォーラムをどうぞよろしくお願いいたします。2025年の年末を振り返ると、量子科学技術研究開発機構(QST)と三菱電機が2025年12月23日に、茨城県那珂市にある那珂フュージョン科学技術研究所で開催した記者会見が思い出されます。

 同会見では、那珂フュージョン科学技術研究所内のトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」において、2つの「高速プラズマ位置制御コイル(以下、FPPC)」を完成させたと発表しました。

 JT-60SAはトカマク型核融合実験炉を対象とした実験装置です。トカマク型核融合実験炉は、1億℃の水素ガス(プラズマ)に電流(プラズマ電流)を流すことで、電流が作る磁場を重畳させて磁場を捻(ひね)り、磁場の籠でプラズマを閉じ込めます。

トカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」 トカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」[クリックで拡大]

 しかし、プラズマ中のイオンや電子などの粒子が、磁場によって閉じ込められていても、互いに衝突しながら徐々に拡散し、最終的に真空容器の内壁に向かってしまうという課題があります。このような状況下で閉じ込め性能を高めるためには、プラズマの形状を工夫し、プラズマ自身の圧力で粒子の拡散を抑え、粒子が真空容器の内壁に到達するまでの経路をできるだけ長くしなければなりません。現在は、プラズマの断面を縦長の三角形にすることが、閉じ込め性能の向上に効果的だと分かっています。

 今回のFPPCは、この三角形の形状を維持するためのコイルで、那珂フュージョン科学技術研究所内に配置されているJT-60SAの真空容器内の上下2カ所に設置されています。プラズマが不安定になり、理想的な三角形が崩れそうになった際に、FPPCに流す電流を調整して磁場を変化させ、プラズマの位置と形状を精密に制御します。

「JT-60SA」の真空容器の入り口 「JT-60SA」の真空容器の入り口[クリックで拡大]

 真空容器内に装着されたFPPCは、2026年に開始するJT-60SAのプラズマ加熱実験で使用されます。同実験では、日本と欧州が共同で開発した制御プログラムや今回のFPPCを用いてプラズマを安定して制御/維持します。このプラズマ制御技術は、日本、欧州、ロシア、米国、中国、韓国、インドの国際協力の下、フランスで建設が進められている核融合発電の実験炉「ITER(イーター)」で計画されているプラズマ制御を事前に検証できるレベルとなるそうです。

 今後、FPPCを搭載したJT-60SAで何を行うかについて紹介します。

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