蒸留および蒸留塔の基本原理はじめての化学工学(14)(2/2 ページ)

» 2026年01月07日 07時00分 公開
[かねまるMONOist]
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蒸留塔の原理

 蒸留塔内部では、下から上がってくる「蒸気」と、上から降ってくる「液体」が接触し、物質の移動(気液接触)が行われています。これを効率よく行うために、塔内にはトレイ(棚段)や充填(じゅうてん)物といった、インターナルと呼ばれる内装品が設置されています。インターナルの種類により、棚段塔と充填塔に大きく分類されます。

 棚段塔は、塔内が「段」で区切られているタイプです。トレイの上に液を溜め、下から上がってきた蒸気をその液層に通すことで気液接触させます。代表的なものに、泡鐘(バブルキャップ)トレイや多孔板(シーブ)トレイ、バルブトレイがあります。トレイに溜められる量の液を超えた分は、サイドにある吹き抜け箇所(ダウンカマー)を通って下の段へ流れていきます。

 充填塔は、トレイの代わりに「充填物」を詰め込んだタイプです。液は充填物の表面を濡らしながら膜状に流れ落ち、その隙間を蒸気が通り抜けることで接触します。圧力損失が小さいため、真空蒸留(減圧蒸留)など、熱に弱い物質の分離に適しています。金網や金属板を加工した「規則充填物」や、小さなリングやサドル状の「不規則充填物」に大別されます。

図3 蒸留塔(棚段塔)の構造イメージ 図3 蒸留塔(棚段塔)の構造イメージ[クリックで拡大]

還流(リフラックス)

 蒸留塔の性能を決める最も重要な操作が還流(リフラックス)です。塔頂で凝縮させた液の全量を製品として抜き出すのではなく、一部を再び蒸留塔の最上段に戻します。戻された液(還流液)は塔内を下降しながら、上昇してくる蒸気と接触します。還流量を増やすほど、理論上は塔頂製品の純度を高められます。製品として抜き出す量に対する、塔に戻す液量の比率を「還流比」といいます。

 還流比を大きくすれば分離性能は上がりますが、加熱や冷却に必要なエネルギーが増大します。逆に還流比が小さすぎると、蒸留塔の段数を多くして分離性能を向上させる必要があります。そのため、経済性と性能のバランスが取れた「最適還流比」で運転することが重要です。最適還流比は通常、最小還流比(理論上無限の段数を必要とする最低限の還流比)の1.2〜2.0倍です。



まとめ

 今回は、産業で用いられる蒸留設備の基本原理について解説しました。蒸留は化学プラントや製造現場で最も重要な分離技術の1つです。設備規模が大きく、運転期間も長いため、経済性と性能のバランスを取ることが重要です。次回は詳細の蒸留計算方法について解説します。

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筆者代表紹介

かねまる

プラント技術の解説サイト「ケムファク」を運営。大学院まで化学を専攻し、現在は化学メーカーの生産技術職に従事。


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