国内では将来、アンモニアの火力発電への利用などにより、大規模なアンモニアサプライチェーンは構築されると同時に、多岐にわたる水素需要が増加すると予想されている。さらに、日本政府では年間の水素需給目標量として、2025年までに約200万t、2030年までに約300万t、2050年までに約2000万tを掲げている。
各地域の公開情報による、カーボンニュートラルポートとコンビナート別の水素/アンモニアの国内需要に関して、苫小牧地域は水素が2.1万t、アンモニアが603万t、新潟地域は水素が35万t、アンモニアが230万t、鹿島地域は水素が255万t、アンモニアが1371万t、千葉地域は水素が310万t、川崎地域は水素が310万t、名古屋/碧南知多/四日市地域は水素が200万t、アンモニアが600万t、大阪地域は水素が67万t、アンモニアが115万t、神戸/姫路地域は水素が630万t、徳山下松/周南地域は水素が200万t、アンモニアが300万t、北九州地域は水素が120万tとなっている。
大規模な火力発電所や石油/鉄鋼の産業が近隣にある地域は、水素/アンモニアの需要ポテンシャルも高く、比較的早期に、カーボンニュートラル技術の実装が進むとみられている。「そのため、アンモニア分解システムの潜在的ニーズが高い」(鹿島氏)。
水素の輸送形態については、各地域でアンモニアを中心にメチルシクロヘキサンなど幅広く検討されている状況だ。
鹿島氏は「欧州のように水素パイプラインが整備されていない日本では、需要地(エンドユーザー)の近くまでアンモニアで運び、その場で水素に分解して使う『分散型』のニーズが高いとみている」とコメントした。
なお、三菱重工では、バングラデシュやロシア、マレーシア、アルジェリア、ウズベキスタン、インドネシアなどでアンモニアプラントの建設実績があり、これに基づき、合成ガスのハンドリング、高温高圧と腐食に対する設計知見を有している。化学プラントに関する研究設備も保有しており、アンモニア分解の要素研究を自社内で実施できる。こういった強みもあり、アンモニア分解システムの開発に取り組んでいる。
鹿島氏は「国外でアンモニアプラントの建設実績はあるが、アンモニア分解システムは日本を中心に展開する。水素をアンモニアを長距離輸送せざる得ないエリアは、世界を見渡すと、日本、韓国、台湾などの東アジアと欧州の一部だと考えている。しかし、欧州はオランダを中心に水素のパイプラインがあり、1箇所で大規模にアンモニアを分解し水素を生産して、パイプラインで輸送できる。そのため、大量のアンモニアを分解し多量の水素を生産可能なファーネス方式のアンモニア分解システムが適している」と強調した。
その上で、「水素のパイプラインがない日本は、長距離輸送を必要とする分散型のマーケットボリュームが最も大きいだけでなく、水素/アンモニア市場の立ち上がりが早いため、ファーストターゲットを国内市場に設定している」と明かした。
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