これら両リソース推進に向けた具体的な活動も始めている。
インナーソース推進の中核としては、開発プラットフォーム「GitHub Enterprise」を社内インナーソースコミュニティー(リポジトリ)として活用する。プロジェクト管理からテスト、実装に至る開発プロセス全体をGitHub上で完結させることで、開発資産やナレッジを自動的に蓄積する仕組みとした。
加えて、AIペアプログラミング機能「GitHub Copilot」を導入。検索範囲を社内のインナーソースリポジトリに設定することで、開発者は関心のあるナレッジや過去の開発データを自然言語で検索、閲覧できる環境を整備した。
このGitHubによるインナーソースコミュニティーは2024年6月にトライアルを開始し、2025年7月より本格導入した。既に、実際にPoC(概念実証)として複数の事業部が連携するソフトウェア開発が実現するなど、具体的な成果も表れ始めている。
現時点(2025年11月)でのコミュニティーの参加者数はGitHub上で727人、Teamsチャネルで1502人に達しており、Web-API基盤やFactory Automation(FA)関連プロジェクトなど、331の開発リポジトリが集積された。
設立当初から同コミュニティーをリードする三菱電機 オープンソース&インナーソース共創推進部部長の追立真吾氏は、「現在はGitHub上の開発プロセスからのみナレッジを収集しているが、将来的には開発リソースだけでなく多様なナレッジを、他のクラウドも活用しながら集積していきたい」と語る。
オープンソースの推進では、FAロボットの市場拡大戦略として活用した。三菱電機は2024年10月に、オープンソースのロボットプラットフォームである「ROS2」に向けて、同社の産業用/協働ロボットに対応するソフトウェア「MELFA ROS2 Driver」をOSSとして公開した。開発者はこのOSSを介して、三菱電機の他のオートメーション製品にアクセスすることが可能になる。このOSS公開の結果、これまで接点がなかったブラジルの企業から商談が入るなど、具体的なビジネス成果にもつながっているという。
三菱電機は、「オープンソース」と「インナーソース」の活用を両輪で加速させることで開発リードタイムの抜本的な削減を実現し、変化が激しい外部環境に即応できる製品展開を目指す構えだ。
同日、Serendie Street Yokohamaではインナーソースの実践者コミュニティーを支援する団体「InnerSource Commons Foundation」の設立10周年を記念する「InnerSource Summit 2025」が開催された。横浜(日本)、ベルリン(ドイツ)、ニューヨーク(米国)の3拠点をリレー形式で結び、アジア拠点となった横浜会場は100人超(所属団体70超)の関係者が来場した。
基調講演として登壇した三菱電機の志自岐氏は、「共創なくしてイノベーションなし」と訴え、同社のSerendie事業やオープンソース/インナーソース活用の取り組みについて、来場者にプレゼンを行った。
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