ロボットプラットフォームとして知られる「ROS」の需要が高まり続けている。本稿では前後編に分けて、ROSの進化とデジタルツインの可能性について考察する。前編では、ROSの最新動向とデジタルツインへの対応状況について紹介する。
2023年現在、製造業向けロボット市場は2027年に2兆円規模になると予測されており、サービスロボットの世界市場も2030年に4兆円規模になると見込まれている(富士経済調査による)。コロナ禍が終息した現在でも、人手不足やコスト削減の問題は依然として存在するため、ロボットの需要はさらに高まっていくことが予想される。このような市場環境も手伝って、ロボットのプラットフォームであるROS(Robot Operation System)の利用者は増加し続けている。
2021年1〜3月にかけて、「ROSを使ってロスなくロボット開発」という連載タイトルで、ROSの基本的な概要や進化の歴史、そしてROSを利用したシミュレーションの活用方法について紹介した。今回は、前後編に分けて、前回連載後のROSの進化を振り返りつつ、近年成長が著しいデジタルツインという技術の観点からROSの活用方法を考察する。
ROSは、ロボットのソフトウェア開発者向けに、ロボットソフトウェア作成を支援するライブラリやツールを提供するオープンソースプラットフォームである。さまざまなセンサーや、ロボットのハードウェアとソフトウェアを包括的に扱うことができ、ロボット開発において重要な位置付けとなっている。
ROSは、Open Robotics主導の下、コミュニティーによって開発が続けられている。ROSは「ROS 1」と「ROS 2」という2つのバージョンが存在し、ROSの統計サイト「ROS Metrics」によると、前回の記事連載当時(2021年1月)はROS 1のパッケージ利用数がROS 2を上回っていたが、2023年11月時点ではROS 2の利用数がROS 1を上回ってきている。
これは、ROS 1の最終バージョンである「Noetic」が2025年にサポートを終了することが原因で、それに伴いROS 2を利用するユーザーが増加しているためと考えられる。ファナック、安川電機、デンソーウェーブのアームロボット、オムロンの自律移動ロボット、北陽電機のLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)といったようなROSに対応している企業が多くある中、ROS 1に対応したロボットパッケージやセンサーライブラリをROS 2に移行する企業やユーザーが増えており、ROS 2への移行が今後ますます加速していくことが予想される。
富士ソフトもROS/ROS 2の開発を支援するサービスを展開しているが、自律移動ロボットを始めとしたロボットソフトウェアのプロジェクトでROS 2を使用するケースが増えている。
前回連載の前編で紹介した「ROS-Industrialコンソーシアム」や「ROS Japan Users Group」を含め、ROS関連の活動は、国内外で継続されている。また、Open Roboticsの主導で「ROSCon」と呼ばれるROSの大規模な発表会が毎年開催され、世界中のROSの開発者が集まり、成果を発表する場となっている。
2020年と2021年はコロナ禍のため、オンラインでの開催となっていたが、2022年は日本の京都で、2023年は米国ルイジアナ州ニューオーリンズで開催された。また、日本版ROSConの「ROSCon JP 2023」は2023年9月に東京で開催されている。ROS/ROS 2の最新情報が集う場所なので、興味がある方はアーカイブを確認してみてはどうだろうか。
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