ロボットの開発に広く利用されるようになっているロボット開発プラットフォーム「ROS(Robot Operating System)」の活用について解説する本連載。今回は、ROSがオープンソースソフトウェアとしてどのように進化してきたのについて紹介する。
人手不足やコロナ禍を背景に、物流業界や飲食業界を中心にして、AGV(Automated Guided Vehicle)やAMR(Autonomous Mobile Robot)などの自律型移動ロボットの導入が盛んになってきた。また、以前からある産業用ロボットとは違い、柵などで囲む必要がなく人と協働できる協働ロボットの開発や導入が盛んになっている。そのようなロボットの多くに採用されている技術として「ROS(Robot Operating System)」がある。
筆者はかれこれ5年程ROSに携わっているが、近頃ではサービスロボットという新しいジャンルでもROSが採用されるケースをよく見かけるようになった。産業用ロボットは、高い品質が求められる製造業の組立、溶接、塗装などの工程において、短いタクトタイム※)や連続運転が要求される用途に用いられているが、これに対してサービスロボットは、そのようなシビアな条件を問われない。ロボット開発に役立つROSの採用はそういった分野で広がりを見せつつある。
※)製品1台または部品1個を作るのに課せられた制限時間
本連載では、注目を集めるROSについて以下の3部構成で解説する。
前編に当たる今回は、「ロボット開発プラットフォームとしてのROS」と題し、ROSがオープンソースソフトウェアとしてどのように進化してきたのかを中心に解説する。
ROSは、ロボットのソフトウェア開発者向けにロボットアプリケーションの作成を支援するライブラリやツールを提供するロボット開発用のプラットフォームである。
なぜロボットのソフトウェア開発でそういったプラットフォームが求められたのかという背景については、以下に挙げる、2015年に掲載されたMONOistの連載「ROS(Robot Operating System)概論」の第1回記事をご覧いただいた方がいいだろう。
ROSの生い立ちとなるスタンフォード人工知能研究所の「STAIR(STanford AI Robot)」やWillow Garage、Willow Garageが設立したOSRF(Open Source Robotics Foundation)に管理が移管されたところまでのROSの歴史についても、以下に挙げた「ROS(Robot Operating System)概論」第2回記事の3ページ目で解説されている。
2015年以降のROSの歴史については以下のようになっている。
先述したOSRFは、2016年にOSRC(Open Source Robotics Corporation、現在のOpen Robotics)を法人として設立した。さらに2018年には、アジア太平洋地域での取り組みを強化する目的で子会社OSRC-SG(Open Source Robotics Corporation Singapore Pte Ltd)を設立している。
これら2社がOpen Roboticsを形成し、「ロボット工学の研究、教育、製品開発に使用するためのオープンソースソフトウェアの開発、配布、採用をサポートする」というOSRFの本来のミッションに専念している。Open Roboticsが管理するオープンソースソフトウェアは、ROSとROSのシミュレーター「Gazebo」があり、WebサイトやSNSで情報を公開している。
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