宇宙とつながる、“痛み”を伝える、声を選ぶ――CEATEC AWARD 2025の注目技術製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2025年10月08日 07時30分 公開
[安藤照乃MONOist]
前のページへ 1|2       

他人の”痛み”を共有!? NTTドコモの痛覚可視化プラットフォーム

 経済産業大臣賞を受賞したのは、NTTドコモが開発した「“痛み”の共有による相互理解の深化を実現するプラットフォーム」だ。脳波から痛みを測定/数値化して他者と共有できる技術である。

 この技術は、共同開発者のPaMeLaのセンシングデバイスと、ドコモが開発した「人間拡張基盤」を連携させることで、個人ごとの痛覚感度を推定し、相手の感覚に合わせて痛みを再現する。

 例えば、同じ温度刺激に対する脳波の違いを解析し、数値やグラフ、さらには身体で体感できるデバイスを通じて、言語化が難しい「痛み」の感覚を他者が理解できるようにする。

 NTTドコモの痛覚可視化プラットフォーム。痛覚(温度)刺激装置による痛みを脳波が測定し、人間拡張期盤が数値化する NTTドコモの痛覚可視化プラットフォーム。痛覚(温度)刺激装置による痛みを脳波が測定し、人間拡張期版が数値化する[クリックで拡大] 出所:NTTドコモ

 この技術は、医療現場における患者と医療従事者のコミュニケーションの質向上に寄与する他、スポーツ分野でのトレーニング最適化や、エンターテインメント分野での応用も視野に入れている。また、現時点では外的な痛みに限定されているが、将来的には心の痛みなど内的ダメージの検知も目指す。

マスク表面の振動を検出し話者本人のみの音声を高精度に抽出――村田製作所

 デジタル大臣賞を受賞したのは、村田製作所のマスク装着型デバイス「mask voice clip」だ。クリップに搭載されたセンサーをマスクの内側に装着することで、話者本人の声のみを高精度に抽出する音声入力デバイスである。

 村田製作所が開発した「Picoleaf(ピコリーフ)」という圧電フィルムセンサーを採用した。これがマスク表面の微細な振動を直接検出し、周囲の騒音や他社の声を物理的に遮断する。これにより、騒音下や複数人が同時に話す環境でも、話者の音声を正確に取得することが可能だ。

(左)村田製作所の「mask voice clip」と(右)その装着イメージ (左)村田製作所の「mask voice clip」と(右)その装着イメージ[クリックで拡大] 出所:村田製作所

 デモンストレーションでは、通常のピンマイクは周囲のニュースの音声も拾ってしまっているのに対し、「mask voice clip」は話者の声のみを取得していた。村田製作所の実証では、ノイズ環境下でマイクを使って取得した音声データ認識の文字誤り率(CER)が、従来のピンマイクでは19.7%だったのに対し、mask voice clipで6.1%にまで改善されたという。マスク着用が求められる医療/製造現場や、現場状況の音声記録などへの活用が期待される。

「画面上側のmask voice clipは話者の声のみを取得しているのに対し、同下側の通常のピンマイクは周囲のニュースの音声も拾っている 画面上側のmask voice clipは話者の声のみを取得しているのに対し、同下側の通常のピンマイクは周囲のニュースの音声も拾っている[クリックで拡大]出所:村田製作所

⇒その他の「製造マネジメントニュース」の記事はこちら

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR