経済産業大臣賞を受賞したのは、NTTドコモが開発した「“痛み”の共有による相互理解の深化を実現するプラットフォーム」だ。脳波から痛みを測定/数値化して他者と共有できる技術である。
この技術は、共同開発者のPaMeLaのセンシングデバイスと、ドコモが開発した「人間拡張基盤」を連携させることで、個人ごとの痛覚感度を推定し、相手の感覚に合わせて痛みを再現する。
例えば、同じ温度刺激に対する脳波の違いを解析し、数値やグラフ、さらには身体で体感できるデバイスを通じて、言語化が難しい「痛み」の感覚を他者が理解できるようにする。
この技術は、医療現場における患者と医療従事者のコミュニケーションの質向上に寄与する他、スポーツ分野でのトレーニング最適化や、エンターテインメント分野での応用も視野に入れている。また、現時点では外的な痛みに限定されているが、将来的には心の痛みなど内的ダメージの検知も目指す。
デジタル大臣賞を受賞したのは、村田製作所のマスク装着型デバイス「mask voice clip」だ。クリップに搭載されたセンサーをマスクの内側に装着することで、話者本人の声のみを高精度に抽出する音声入力デバイスである。
村田製作所が開発した「Picoleaf(ピコリーフ)」という圧電フィルムセンサーを採用した。これがマスク表面の微細な振動を直接検出し、周囲の騒音や他社の声を物理的に遮断する。これにより、騒音下や複数人が同時に話す環境でも、話者の音声を正確に取得することが可能だ。
デモンストレーションでは、通常のピンマイクは周囲のニュースの音声も拾ってしまっているのに対し、「mask voice clip」は話者の声のみを取得していた。村田製作所の実証では、ノイズ環境下でマイクを使って取得した音声データ認識の文字誤り率(CER)が、従来のピンマイクでは19.7%だったのに対し、mask voice clipで6.1%にまで改善されたという。マスク着用が求められる医療/製造現場や、現場状況の音声記録などへの活用が期待される。
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