GPUボードの電力損失を垂直電源供給で5分の1に、村田製作所が「iPaS」で実現CEATEC 2024

村田製作所は、「CEATEC 2024」において、電源回路のコンデンサーやインダクターをパッケージ基板に内蔵することでGPUボードの消費電力を大幅に低減できる部品「iPaS」を披露した。2026年ごろの実用化を目指している。

» 2024年10月16日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 村田製作所は、「CEATEC 2024」(2024年10月15〜18日、幕張メッセ)において、電源回路のコンデンサーやインダクターをパッケージ基板に内蔵することでGPUボードの消費電力を大幅に低減できる部品「iPaS(アイパス)」を披露した。既にGPUボードやAI(人工知能)アクセラレータのベンダーからの引き合いもあり、2026年ごろの実用化を目指して開発を進めている。

コンデンサータイプの「iPaS」 コンデンサータイプの「iPaS」[クリックで拡大]

 生成AIの需要拡大によってAIデータセンターの建設が急ピッチで進む中で、課題として急浮上しているのがデータセンターの消費電力の増大である。この大きな消費電力の要因となっているのが、AIの学習や推論を行うGPUボードの消費電力である。一説では、GPUボード1枚で消費電力が1000Wに達することもあるという。

 現在、GPUボードの回路構成では、GPUの横に電源モジュールを配置するとともに、GPUの裏面に積層セラミックコンデンサーを高密度に表面実装していることが多い。しかしこの構成は、電源モジュールからGPUまで一定の配線距離を取る必要があり、その分だけ電力損失が発生してしまう。

現行のGPUボードの表面現行のGPUボードの裏面 現行のGPUボードの表面(左)。GPUの横側に電源モジュールが並んでいる。GPUボードの裏面には積層セラミックコンデンサーが高密度に表面実装されている(右)[クリックで拡大]

 この配線距離をさらに短くできる新たな回路構成として検討されているのが、積層セラミックコンデンサーを実装しているGPUの裏面に電源モジュールを配置する垂直電源供給である。ただし垂直電源供給では、これまで裏面に高密度実装していた積層セラミックコンデンサーや、電源モジュールと周辺に実装していたインダクターを設置する場所がなくなってしまう。iPaSは、これらのコンデンサーやインダクターを、GPUや電源モジュールのパッケージ基板内に内蔵できるようにした部品である。「現行の消費電力1000WクラスのGPUボードの場合、配線距離に基づく電力ロスが250Wほど発生しているといわれている。垂直電源供給に置き換えると、この電力ロスが約5分の1の50Wにまで抑えられる可能性がある」(村田製作所の説明員)。

現行のGPUボードの回路構成(上)と将来的な垂直電源供給の回路構成(下)の比較 現行のGPUボードの回路構成(上)と将来的な垂直電源供給の回路構成(下)の比較[クリックで拡大] 出所:村田製作所

 コンデンサータイプのiPaSは、個別のコンデンサーとして利用可能な容量を持つユニットを複数作り込んだ厚さ0.35mmの板状の部品になる。展示した品種は、サイズが横7.63×縦9.10mmの場合で8×4で32ユニット、横7.63×縦19.10mmの場合で8×9で72ユニット、横19.75×縦19.10mmの場合で22×9で198ユニットとなっている。コンデンサーの容量部を貫くスルーホールで電極パッドが結ばれており、先述した垂直電源供給に最適な構造であるとともに、配線のインダクタンス成分も低減できている。また、インダクタータイプのiPaSは、外形寸法が2.6×2.6×0.7mmで直流重畳特性が10A、7.0×3.5×2.1mmで40Aとなっている。

インダクタータイプの「iPaS」とiPaSを組み込んだパッケージ基板 インダクタータイプの「iPaS」とiPaSを組み込んだパッケージ基板[クリックで拡大]

 なお、iPaSは「CEATEC AWARD 2024」のイノベーション部門を受賞している。

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