日本特殊陶業がポーランドでSOECを用いた水電解装置の実証/開発製造マネジメントニュース

日本特殊陶業は、ポーランドの研究機関や企業と、固体酸化物形電解セル(SOEC)を用いた水電解装置の実証と産業スケール向けシステムの開発に関する覚書(MOU)を締結した。2026年初頭に実証機の稼働を開始する。

» 2025年09月29日 11時00分 公開
[MONOist]

 日本特殊陶業は2025年9月10日、ポーランドのLukasiewicz Research Network New Chemical Syntheses Institute(L-INS)、Hynfra、Rockfin、同国の化学メーカーを含む5者で、グリーンアンモニア合成向けの固体酸化物形電解セル(SOEC)を用いた水電解装置の実証と産業スケール向けシステムの開発について覚書(MOU)を締結したと発表した。

 セラミック技術を利用するSOECは、プロセスで生じる廃熱を利用できる環境で高効率に水素を製造できる。今回の合意に沿って、L-INSの実証施設に小規模SOEC装置を設置し、2026年初頭に稼働を開始する。実証機は工場の実際のインフラを利用し、SOECによる水素製造とハーバーボッシュ法によるアンモニア合成を組み合わせる技術の成立性を検証する。

 さらに、産業スケールでのSOEC量産モデルの共同開発も進めていく。この取り組みを通じて生産される高純度水素を、ポーランドの主要産業であるアンモニアや肥料の生産プロセスで直接使用する。初期目標としては、年間数十万トン規模のアンモニアを生産する工場に水素を供給することを掲げている。従来の化石由来の水素を再生可能エネルギー由来の水素に置き換えることで、CO2の排出量削減を図る考えだ。

 参加企業の役割としては、Hynfraがプロジェクト全体の管理と政府との折衝を担い、Rockfinは水電解システムの設計と設備製造を担当する。L-INSはアンモニア製造プロセスの開発と最適化の知見、実証設備を提供し、日本特殊陶業はSOECの製品開発と製造を担う。

 今回の取り組みは、ポーランドの2030年脱炭素目標に貢献するとともに、化学工業や鉄鋼業などの水素需要の大きい産業に向けて、SOECの実証を加速させる狙いがある。

覚書(MOU)の概要イメージ 覚書(MOU)の概要イメージ 出所:日本特殊陶業

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