N-ONE e:のバッテリー容量は29.6kWhだ。出力6kW以上の普通充電なら4.5時間で充電が完了する。急速充電は出力50kW以上なら30分間で80%まで充電できる。バッテリーの冷却/加温により、季節を問わず走行可能距離や充電時間が安定するとしている。
N-ONE e:のバッテリーやモーター、充電システムはN-VAN e:と共通だ。N-VAN e:は空力性能に直結する前方投影面積がかなり大きくなるため、走行可能距離は245kmにとどまっていた。N-ONE e:は前方投影面積が小さくなる他、タイヤや車両重量の違いもあって同じバッテリー容量ながら走行可能距離が大きく伸びた。
プラットフォームはガソリン車のN-ONEをベースにしてコストを抑えた。EV化するに当たって、ガソリン車のN-ONEが持つ室内の広さと使い勝手を継承した。N-ONEと同等の全高に抑えており、電費向上にも貢献した。モーターやインバーター、車載充電器を重ねて収める都合でガソリンエンジンよりも高さが出て、ガソリン車のN-ONEに比べてフードもやや高くなった。ただ、フードが高くなることで運転中の動的視界が改善するなどメリットもあり、デザインもベースのN-ONEから変更した。
ホンダのパッケージングの基本思想である「M・M思想(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)」により、大人4人が快適に乗車できる空間を確保した。また、バッテリーを床下に配置しながら、ダイブダウン機構でリアシートを倒してフラットな床面を作れるようにした。室内空間が重視されるN-VANのEV化で追求したバッテリーの薄さがN-ONE e:にも生きた。
床下のバッテリーは、全長に対しては前席のシート下から後席シートまで、衝突時の保護を考慮した上で全幅に対しても「幅をしっかり使って」(パワートレイン担当の渡邊氏)、収められている。フロア高は前席はN-ONEのガソリン車とほぼ同等で、後席はやや上がった。今後さらにバッテリー容量を増やすのは難しいほど、ギリギリまで搭載したという。外部への給電機能や、住宅に電力を供給するV2H(Vehicle to Home)も利用できる。
モーターは出力47kWで162Nmのトルクを発揮する。他社モデルと比べてトルクは劣るが、ギア比を低く設定することで他社よりも高い出力と発進性能を実現したとしている。
ホンダのサポートサービス「ホンダトータルケア」に加入すると、ホンダコネクトを通じてスマートフォンのアプリから充電状況の確認やエアコンのタイマー設定などの機能が利用できる。充電する時間帯を曜日単位で設定したり、最大充電量や充電時の最大電流量に制限をかけたりすることも可能だ。
N-ONE e:はオンラインストア「Honda ON」限定でサブスク(リース)の「バリュープラン」が選択できる。車検などのメンテナンス代、税金、メーカー保証、バッテリーの性能保証などを含めて定額を毎月支払う。
通常のリースと異なるのは、リース終了後のバッテリー利活用を前提にした残価を設定したことだ。通常のリース商品と比べて残価を高く設定できる。「EVは数年後に乗り換えるときに価値が大きく下がる」という懸念を持つ層に向けて、EVの価値が下がりにくいことをアピールし、安心して乗ってもらう狙いがある。また、ユーザーは月々の支払いを3000円ほど抑えられる。
充電ネットワークサービスのホンダチャージは、プラゴと協力している。ホンダとプラゴは2024年8月にプラグ&チャージ機能の共同開発契約を、2024年10月には公共充電ネットワークの拡大に向けた業務提携契約を結んだ。
ホンダチャージは入会金や基本料金は無料で、従量課金制で充電料金のみを支払う。現時点ではホンダ販売店52カ所にホンダチャージ対応充電器が設置されている。また、プラゴが設置している732基の充電器でもホンダチャージ用のアプリを通じて充電できる。
ホンダチャージ用のスマートフォンアプリを通じて、空いている充電スポットを事前に予約することもできる。予約料金は発生せず、スペース手前のスマートバリア(可動式の車止め)によって充電スポットを最大で60分間確保する。
プラグ&チャージでは、車両に充電コネクタを差し込むと自動でユーザーを認証し、充電を開始する。これまでのように認証用のカードをかざして充電器側の画面やボタンを操作する必要がなくなる。プラグ&チャージ機能の利用には車両側の機能も必要なため、ホンダ車としては現時点ではN-ONE e:しか対応していない。他社のEVでもCHAdeMO規格のプラグ&チャージに対応した車両であれば利用できる。
N-ONE e:は日々の買い物や通勤など短距離移動をターゲットにしている。身軽かつ気軽に移動できることを重視し、毎日の小さな楽しみを大切にする人をターゲットユーザーにした。これを反映し、エクステリアデザインは「軽快ナチュラルエクステリア」をコンセプトに、Nシリーズらしさを継承しながら軽快さを感じさせるフォルムと、愛着のわく顔を持たせた。
インテリアも、インストゥルメントパネルの上部が薄く感じられる造形とすることで、室内の広がりを強調した。前方視界が広く確保できることで運転時に安心できる見通しの良さも実現した。フロントのフード形状を工夫することで運転席からの視界や前方車両との距離のつかみやすさを向上させた。N-ONEよりもステアリングをドライバーに近づけることで、ステアリングやアクセル操作の安定感を追求した。バッテリーが床下の車体重心に近い位置に配置されていることで、ハンドリングが楽に感じられるという。
走行性能では、アクセル操作に素直に反応するリニアでのびやかな加速性能と街中で運転しやすい発進性能を追求した。ブレーキも安心感を重視し、踏むとすっと止まれて、急な飛び出しなどでブレーキの操作量が大きいときはしっかりきくようにした。
アクセルペダルの操作のみで停止まで可能なシングルペダルコントロールも採用した。市街地での運転しやすさを重視した減速度に設定している。モーターと電動サーボブレーキの協調制御により、スッと止まれるようにした。
資源循環を目指し、N-ONE e:のフロントグリルは、廃棄されたホンダ車のバンパーを活用した「バンパーリサイクル材」を採用した。車内もインストゥルメントパネルのアクセントに三菱ケミカルのバイオ樹脂「DURABIO」を使う他、フロアカーペットや防音材には再生PETや使用済みのホンダの作業着を活用した。純正アクセサリーのテールランプレンズでも、廃車から回収したものを再利用した。
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