リーフが下げられなかったEVのハードルを、サクラで下げていく電動化(1/2 ページ)

日産自動車の新型軽EV(電気自動車)「サクラ」が売れている。2022年5月20日に発表後、現在までに2万3000台以上を受注した。他社ユーザーが半数を占めているという。

» 2022年07月29日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日産自動車の新型軽EV(電気自動車)「サクラ」が売れている。2022年5月20日に発表後、現在までに2万3000台以上を受注した。他社ユーザーが半数を占めているという。

 「想定の2倍というような範囲にはとどまらない好調な受注だ。半導体の供給などサプライチェーンに支障が出る可能性はあるが、2021年の『デイズ』くらいの販売台数が目標だ(※)。台数の大幅増とまではいかないが、サクラをきっかけに『リーフ』『アリア』にも関心が集まるなど好影響が生まれている」(日産自動車のマーケティング担当者)

(※)日産の軽「デイズ」は、2021年1〜12月の販売台数が5万3773台だった。同期間のEV「リーフ」の販売台数は1万843台。

新型軽EV「サクラ」[クリックで拡大]

サクラとは?

 サクラはEVのラインアップの中で、ニッサンインテリジェントモビリティのフラグシップとなるアリア、他社に先駆けて量産したリーフに続く3兄弟の末っ子という立ち位置だ。また、軽自動車としてはデイズや「ルークス」の上に立つフラグシップという位置付けとなる。

日産のEV3兄弟[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 デイズの開発時からEVの製品化を前提にしていたため、容量20kWhのバッテリーを搭載しながら室内空間を広く確保することができた。高さを変えて搭載効率を高められる「ユニバーサルスタック」も室内空間の確保に貢献した。

 軽規格のため最高出力には制限があるが、サクラの最大トルクは排気量2l(リットル)の自然吸気エンジン並み。軽ターボ車の2倍でゆとりを持たせた。発進加速の立ち上がりが早く、滑らかに加速することができる。走行中の室内音は、モーターの上下振動を最少化するマウント構造によって抑制している。EVならではの静粛性を向上させた。

 駆動用バッテリーだけで重量が約200kgあるため、ケースをフロアに留める構造としており、フロア剛性アップに貢献している。重心が車両の中心にあり相対的に頭が軽いことを生かしてステアリング操作に対する応答性を高めている。また、デイズと比べてしっかりした操舵力にチューニングされている。段差を乗り越えるときのショックを抑える3リンクのリアサスペンションは、デイズの4WDモデルと同じ形式だが、バッテリーとの干渉を回避し、ブッシュの容量などを変更したサクラ用の設計となっている。

ユニバーサルスタックの駆動用バッテリー。デイズと同等の室内空間の確保に貢献した[クリックで拡大]

サクラを買う決め手

 当初は、他社ユーザーでサクラを購入する層として軽ハイトワゴンやハイブリッド車のコンパクトカーから乗り換えるユーザーが多いと見込んでいたが、軽スーパーハイトワゴンからも想定を超えてユーザーを獲得している。

 ファーストカーではなくセカンドカーとしての需要を取り込んでおり、EVを買うのは初めてだというユーザーもかなり多いという。補助金によって既存の軽自動車よりも安く買えることが大きな後押しになり、「EVは高い」というイメージを覆すことができたとみている。また、深夜料金の時間帯に自宅で充電すれば、電気代を安く抑えられることなどランニングコストの面でも好評だった。

 軽スーパーハイトワゴンからユーザーを獲得している要因としては、軽スーパーハイトワゴンと比べて予算が合致したこと、ライフステージの変化によって家族を乗せる機会が減り、スライドドアの優先順位が下がったことなどが考えられるとしている。年齢層は50代以下と60代以上で半々だ。

 初めてEVを買うユーザーが多いことから、これからEVに乗り継ぐ人が増えていくことに日産自動車は期待を寄せている。「EVに乗る人を増やすには、エンジン車に乗っていた人にEVに乗ってもらう必要がある。日産の調査ではEVからEVに乗り換える定着率は75〜80%だ。サクラをきっかけに、次もEVに乗る人が増えていく好循環になってほしい」(日産自動車のマーケティング担当者)

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