ホンダは軽商用バンタイプのEV「N-VAN e:」を2024年10月10日に発売すると発表した。
ホンダは2024年6月13日、軽商用バンタイプのEV(電気自動車)「N-VAN e:」を同年10月10日に発売すると発表した。1回の充電で走行できる距離は245km(WLTCモード)で、充電時間は出力6.0kWの普通充電で4.5時間、急速充電で30分とするなど利便性を追求した。
税込みメーカー希望小売価格は、配送など商用向けが243万9800円からとなる(1人乗りで急速充電に非対応のグレードの場合)。4人乗りで個人ユースにも対応できるグレードは269万9400円から。事業者用補助金(LEVO補助金)を適用すれば全グレードで200万円を下回る価格設定とした。一般使用補助金(CEV補助金)を適用する場合は軽自動車の最大補助額55万円を受けられる。販売目標台数については公表していない。
また、ホンダは同日、三菱商事と新会社「ALTNA」を2024年7月に設立すると発表した。新会社では、N-VAN e:の発売に合わせて新しいリース商品の販売を始める。車両のリースを行う際にバッテリーの所有権をALTNAが保有する“車電分離”で、リース期間中のバッテリー使用状況をモニタリングする。将来のバッテリー劣化予測も含めて継続的に見守ることで、バッテリーのSOH(State Of Health、バッテリーの劣化状態)などの信頼性を高め、中古車や系統用蓄電池まで長期にバッテリーを利活用するライフサイクル事業を展開していく。
長期の利活用を前提にリース価格を低く設定し、ユーザーの経済的負担を軽減する。このリース商品は新車オンラインストア「Honda ON」限定で提供する。車載用バッテリーとしての利用期間が終了した後は、回収して系統用蓄電池に転用する事業に移行する。系統用蓄電池としての利用が終了した後は、適切なリサイクルにつなげる。
電力網の需給逼迫(ひっぱく)時を避けて充電し、電力コストを最適化する充電プランを提供するスマート重電事業も新会社のALTNAで手掛ける。エネルギー制御システムと車両を連携させることで、クルマの利用スケジュールに合わせて電力の調達コストが最も安くなる時間帯に自動で充電を行う。再生可能エネルギーの余剰が発生する時間帯に充電を行うこともできる。将来のV2G(Vehicle to Grid)サービスの提供も検討していく。
ガソリンエンジン車「N-VAN」をベースに、フラットな低床と高い天井による大容量の荷室空間や、助手席側ピラーレスの大開口部などの特徴を維持したままEV化した。バッテリーの冷却/加温システムの採用によりバッテリーの性能低下を抑制するとともに、冬期の充電時間短縮や1回の充電での走行距離の向上につなげている。
競合の軽商用バンタイプのEVは、1回の充電で走行できる距離が三菱自動車の「ミニキャブEV」が180km(国土交通省審査値)、ASFの「ASF 2.0」が243km(JARI測定値)、CJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)の軽商用EVが200km以上を目指して開発中だ。競合に対してN-VAN e:では優位な走行距離を確保した。
2023年にヤマト運輸と実用性検証を実施してきたことも、性能に対する自信となっている。ヤマト運輸とは、短距離の走行と駐停車を繰り返す東京都内、都内よりも走る距離が長くなる宇都宮市、坂の多い神戸市で検証を行った。開発ターゲットとした性能が、これらの環境で十分に通用することを確かめた。
大容量バッテリーを採用しながら、電動アクスルの小型化、高電圧部品の集中配置による部品占有スペースの最小化などにより、商用ユースに求められる実用的な1充電の走行距離と、ガソリンエンジン車と同等の大容量の荷室を両立している。
パワーユニットは小型化と集中配置により、フロントオーバーハングやフード高を犠牲にせずエンジンルームに搭載できるようにした。バッテリーは薄型化を図りながら容量29.6kWhを確保し、これまで燃料タンクがあったスペースに納めた。バッテリーは強固なフレームにより側面衝突から保護する。前面衝突では、衝突時に部品がすれ違うようにすることで、電機部品を損傷から守る。
駆動用バッテリーであるリチウムイオン電池は三元系のNCMで、AESCジャパンの国内拠点から調達した。車両の製造は三重県四日市市にあるホンダオートボディーで行う。
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