ついでに、シミュレーション結果を紹介します。ここまで読んでこられた読者の皆さんにとって、熱伝導解析は比較的簡単な部類に入るのではないかと思います。図6に解析モデルと境界条件を示しています。なお、温度分布を分かりやすくするため、表2とは異なる数値を使用しています。
図7にシミュレーション結果を、図8に式19による値とシミュレーション結果を示します。ご覧の通り、両者は一致しました。実は、式19に計算ミスがないか少々心配していたのですが、問題ありませんでした。
触れるのは2度目になりますが、前シリーズでは「桁あってますか検算」と称して、シミュレーション結果に誤りがないかを解析解で確認していましたが、ここでは、筆者自身の計算ミスをチェックするためにシミュレーションを使っています(逆ですね)。
では、図2中央に示したホローコンダクターの設計計算Excelシートを作りましょう。表1の設計条件に基づく温度分布を、図2左端のホローコンダクターに適用した結果を図9に示します。
主流の温度とコンダクター壁面の温度には差がありますが、コンダクター内部では温度差がほとんどありません。銅の熱伝導率が高いため、内部の温度分布がほとんど見えなくなりました。
ということは、コンダクターの最高温度と絶縁材の温度は伝熱界面の温度とほぼ等しいと見なすことができ、断面形状が変わっても最高温度はほぼ同じになります。つまり、図2中央のホローコンダクターの設計計算は、前述した設計計算Excelシートで計算できることになります。
次に、図2右端のホローコンダクターの設計計算Excelシートを作りましょう。円形以外の流路断面を扱う場合、「等価的な円形断面で計算する」という考え方があります。これを「水力直径」といいます。水力直径は式21で計算します(参考文献[2])。
図2右端の場合を計算すると、式22のようになります。
当然ながら、流路断面が円形であれば、直径と水力直径は一致します。これで、全てのホローコンダクターの設計計算Excelシートが完成しました。
さて、次回はちょっと冒険をしてみましょう。円管層流流れのヌセルト数の導出に挑戦します。おまけも付けておきますので、お楽しみに。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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