捨てられていた食品残渣が、地球にやさしい肥料に生まれ変わるかもしれない。サントリーホールディングスは、ミミズを使った資源循環の実証実験を開始した。東京都千代田区で開発が進められている複合施設「TOKYO TORCH」街区に設置されたコンポスト「mimizunchi(ミミズンチ)」で、街区内の飲食店から出るコーヒーかすなどをミミズに分解させ、堆肥を生成する。
サントリーホールディングスは2025年8月28日、ミミズを用いた残渣(ざんさ)の有機肥料(堆肥)化に向けた実証実験を開始したと発表した。ミミズは有機物を分解する能力が高く、その排せつ物には、植物の生育に必要な微生物や栄養素(窒素、リン酸、カリウムなど)が含まれる。今回の実証は、ミミズの働きに着目し、残渣をアップサイクルさせて有機肥料を作ることを目的としている。
実証実験では三菱地所と協力し、同社が開発を進める複合施設「TOKYO TORCH(トウキョウ トーチ)」街区(東京都千代田区)にミミズの入ったコンポスト「mimizunchi(ミミズンチ)」を設置し、街区内の飲食店から出る食品残渣(主にコーヒーかす)を投入する。
ミミズを通じた分解により堆肥/液肥を作り、それを街区の植栽などの栽培に使用することで、街区内(都市部)の資源循環の実現を目指す。mimizunchiでミミズを飼育するに当たっては、定住型でコンポスト内にとどまる性質を持ち、残渣の処理(消化)能力が高いシマミミズを活用。同コンポストは1日当たり最大で約2kgの残渣を処理でき、残渣を投入してから、約3カ月で堆肥が完成する。
ミミズを活用した有機肥料の開発プロジェクトは、サントリーグループの社内ベンチャー制度「FRONTIER DOJO(フロンティア道場)」から生まれ、事業化に取り組んでいる。自社から出る汚泥をミミズに与えて作られる堆肥について肥料としての有用性を検証しており、将来的にはミミズにより作られた肥料の商品化/販売を目指す。
ミミズによる有機肥料は良い土壌の条件とされる多様な微生物や栄養バランスを含むなど多くのメリットがあり、サントリーグループは身近な生き物で製造可能という点に注目。資源循環の観点で、将来的には汚泥だけでなく製造残渣の活用なども検討している。
加えて、ミミズを活用した肥料が実用/市販化できれば、農業分野での化学肥料などの使用量減に伴う温室効果ガス(GHG)削減や有機肥料栽培における農作物の収量増、残渣/汚泥のアップサイクルなどで、資源循環に貢献できると考えている。
同社では以前から、土壌の健全性や生物多様性などを保護/再生しながら、農家の生活向上にも資するアプローチ「再生農業」などで、土壌の改善を通じた持続可能な農業の導入に取り組んでいる。
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