続いて、ジョーンズ氏が最新の国内外における採用事例を紹介した。
冒頭、ジョーンズ氏は「自動車業界では、世界中のほぼ全てのOEMが何らかの形でXceleratorテクノロジーを活用している。これは、従来の大手自動車メーカーに加え、世界各地で次々と登場しているEVスタートアップも含まれる」と述べた。例えば、BYDはEVの市場投入スピード、生産規模、コスト面で成果を上げており、設計から半導体開発に至るまでXceleratorを幅広く活用している。また、Volvoはデジタルスレッド全体を管理する基盤としてTeamcenterを採用しており、GMでもXceleratorの活用を拡大し、今後の市場成長を支える基盤として位置付けているという。
さらに、ジョーンズ氏は「航空宇宙/防衛分野でも、世界のトップ12社全てがXceleratorのユーザーであり、ほとんどの航空エンジンメーカーが、設計、データ管理、シミュレーション、製造プロセスの設計にXceleratorを活用している」と説明する。例えば、GulfstreamはTeamcenterによるエンタープライズBOM管理を拡大しており、Bombardierは既に導入済みのTeamcenterに加え、今後の全てのプログラムで設計とエンジニアリングのためのソフトウェアスイート「Designcenter」を活用すると数カ月前に発表。Airbusも、次世代航空機の設計にシーメンスのソリューションを採用している。
Designcenterは、スタートアップから大手企業まで、一貫したデータ整合性を備えた開発環境を提供する。例えば、VUHLは高性能かつ超軽量なスポーツカーを製造しており、DesigncenterおよびXceleratorを活用して製品設計や運用管理を行っている。ミニバスメーカーのTremonia Mobilityでは、Xceleratorの導入によって設計サイクルを20%短縮し、変更管理および実装を30%高速化したという。
一方、EDA分野では、スペインのスタートアップであるOpenchipが、IC設計ソリューション「Calibre」およびTessentを含むシーメンスのEDAツールを採用している。また、日本のRapidusもシーメンスと半導体設計での協業を発表しており、同社のEDAソリューションの活用を進めている。
シミュレーション分野でも、AltairのSimSolidによる高速かつ高精度な構造解析の活用が広がっている。Dumareyでは、従来は数週間かかっていた複雑な問題を、数日で効率的かつ正確に解決できたとしている。AirbusもSimSolidを導入しており、シミュレーションの民主化につなげている。
ジョーンズ氏もAltairの買収に言及。「Altairの買収によって、われわれはAIを活用するだけでなく、堅牢なデータ管理とAIを組み合わせた統合ソリューションを実現できるようになった。RapidMinerは、Altairの買収によって当社に加わったAIプラットフォームであり、買収前の時点で既に60万人以上の産業ユーザーが存在していた」と語る。サウジアラビア最大の化学メーカーもRapidMinerの導入企業の一つであり、同プラットフォームを全社的に活用することで、保守コストを30%、設備のダウンタイムを20%以上削減することに成功しているという。
さらに同社では、各種ソリューションのSaaS(Software as a Service)/クラウド経由での提供にも注力しており、ビジネスも堅調に推移している。特に、中小企業(SMB)によるクラウド採用が急増しており、新規クラウド顧客の87%を占めている。また、ライセンス更新のタイミングでは、既存顧客の約90%がクラウド版への移行を選択しており、「クラウド移行は企業規模を問わず急速に進んでいる」とジョーンズ氏は説明する。
最後にジョーンズ氏は、新たな国内導入事例として、ニデックとRapidusの2社の取り組みを紹介した。
「ニデックは、電動モーター開発のイノベーションプロセスの基盤として、SaaS版PLMである『Teamcenter X』を採用した。これは非常にエキサイティングなパートナーシップである。また、Rapidusは、先ほど紹介したEDAツールの活用に加え、半導体のライフサイクル管理を目的としてTeamcenterの採用を決めた。日本企業2社による新たな採用は、われわれの成長とグローバルな展開を象徴する事例といえる」(ジョーンズ氏)
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