物流2024年問題ではトラックドライバーの減少などで国内の物流における輸送力不足が指摘されており、2030年には2022年比で34%低下するともいわれている。パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー シニア・ヴァイス・プレジデント(兼)現場サプライチェーン本部 マネージングダイレクターの山名義範氏は「2030年に輸送力が34%低下するという状況に対応するには、物流プロセスの生産性を1.5倍に高める必要がある」と述べる。
国内の物流現場では、経験則に頼った作業による属人的な運用が多く、システムを導入していたとしても個別システムが乱立状態にあってそれらをつなぐフローが人力頼みにななっている。「働き手がどんどん不足しているのに、新しい人が来てもすぐに働けない状態。人へ過度に依存した業務の解消が必要だ」(山名氏)。
そこで、パナソニック コネクトでは物流現場の変革に向けて、属人的な運用に対しては「業務フローの標準化」で、個別システムの乱立に対しては「物流全体を横断するデータ基盤」を提案する。特に、「業務フローの標準化」は、近年のERP導入で提唱されている「Fit to Standard」の考え方に近く、ブルーヨンダーやゼテスのようにグローバル採用に基づくベストプラクティスに合わせて、顧客企業が業務プロセスを変えていくことになる。ここで課題になるのが、日本国内の物流業界特有の商習慣や法規制などにどのように合わせ込んでいくかだ。山名氏は「そこで、パナソニック コネクトが45年の歴史で積み重ねてきた国内物流業界における知見とノウハウがケイパビリティになる」と強調する。
業務フローを標準化することで、例えば倉庫管理では、これまで作業の順序を人が判断していたところを、ベストプラクティスが反映されたソリューションを適用すれば作業の優先度をシステムが判断しタスクを自動で割り当てられるようになる。人が判断していた時には、電話や口頭による伝達となって作業者間の連携がとりづらいという課題があったが、これをシステムによって自動化できることになる。
中でも、ブルーヨンダーの倉庫管理ソリューションは海外での導入実績が豊富であり、ベストプラクティスも多く積み重ねられている一方で、日本国内ではこれまで採用事例がなかった。今回の会見では、パナソニックグループが製品の倉庫管理を委託しているNX・NPロジスティクスの舞浜倉庫(千葉県浦安市)を、ブルーヨンダーの倉庫管理ソリューションの国内初導入事例として紹介した。
舞浜倉庫では、ブルーヨンダーの倉庫管理ソリューションのベストプラクティスに合わせて業務フローを設計した上で、パナソニック コネクトが日本国内での物流業務や商習慣に合わせる上で必要と判断した、「荷造りの個口情報生成」「送り状No管理」「二位動き棚卸し」などの日本共通機能を追加している。パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー 現場サプライチェーン本部 SCM事業センター ダイレクターの小笠原隆志氏は「入庫作業の生産性は従来比で約1.4倍になり、全体の生産性も約1.2倍になるという成果が得られた」と説明する。
また、物流全体を横断するデータ基盤については、ブルーヨンダーの倉庫管理ソリューションだけでなく、倉庫実行管理システムなどのゼテスのソリューション、人員計画や人トラッキング、作業実績可視化/分析を可能にするパナソニック コネクトのソリューションを組み合わせ、倉庫管理だけにとどまらず、集荷や配送、返品管理までを横断的かつ包括的にサポートするソリューション群をまとめて、これら全てを1つのプラットフォームで利用できるようにしている。
この物流全体を横断するデータ基盤によって、顧客の物流現場における変革の段階的な進展を後押しする。例えば、配送進捗管理システムを導入した福岡運輸は、2025年5月にゼテスの倉庫実行管理システムを導入し、拠点間を含めた全体の可視化にスコープを広げている。「ここからさらに実行データの分析に進めば、物流企業側が荷主との価格交渉も行えるようになる」(小笠原氏)という。
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