最後に、ロボットクリーナーのモデリングについて取り上げる。
ここで、ロボットクリーナーを取り上げる理由は、それがミニ四駆とコードレスクリーナーが合体した製品であるためだ。ただ、実際のロボットクリーナーはさまざまな構造のものが存在し、分解も困難であるため、ここでは教材として売られているロボットクリーナーを対象とした(参考文献[1])。
図11に、ロボットクリーナーの構造を示す。
本体内部には、バッテリー、モーター、ギア、ファンが内蔵されており、左右の車輪は本体外部に配置されている。ファンの下部には、床面からゴミを吸引するためのスリットが設けられている。
また、バンパーは正逆反転機構とつながっており、バンパーが障害物に接触した際、あるいはバンパー先端下部に接触部が存在しない場合に、この機構が作動し、進行方向を切り替える。
図12に、ロボットクリーナーの動作原理を示す。
ご覧の通り、1つのバッテリーで、1つのモーターを動かしている。そして、モーターが発生したトルクを、ギアを介して、走行系とクリーナー系に分配している。なお、本稿では正逆反転機構の説明は割愛する。
図12を基に、これまで取り上げてきたミニ四駆およびコードレスクリーナーの知見を活用して、ロボットクリーナーのモデルを作成すると、図13のようになる。
走行系はミニ四駆、クリーナー系はコードレスクリーナーとモデルとしては同じとなる。異なるのは、1つの電源(バッテリー)と1つのモーターを共用しており、モーターからのトルクおよび回転数が、2系統のギアを通じて、一部は走行系へ、一部はクリーナー系へと分配されている点である。すなわち、ギアの構成、走行系およびクリーナー系の負荷によって、各系統へのトルク(電流)が配分される構造となっている。
図13のモデルをModelica MSLで表現した例を図14に示す。
次回は、本連載の最終回として、これまで言い足りなかった内容について取り上げる。 (次回へ続く)
大富浩一(https://1dcae.jp/profile/)
日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.