製品のモデリングの勘所 〜製品は現象と要素の集合体〜1Dモデリングの勘所(44)(4/4 ページ)

» 2025年06月19日 06時00分 公開
前のページへ 1|2|3|4       

ロボットクリーナーのモデリング

 最後に、ロボットクリーナーのモデリングについて取り上げる。

 ここで、ロボットクリーナーを取り上げる理由は、それがミニ四駆とコードレスクリーナーが合体した製品であるためだ。ただ、実際のロボットクリーナーはさまざまな構造のものが存在し、分解も困難であるため、ここでは教材として売られているロボットクリーナーを対象とした(参考文献[1])。

 図11に、ロボットクリーナーの構造を示す。

ロボットクリーナーの構造 図11 ロボットクリーナーの構造[クリックで拡大]

 本体内部には、バッテリー、モーター、ギア、ファンが内蔵されており、左右の車輪は本体外部に配置されている。ファンの下部には、床面からゴミを吸引するためのスリットが設けられている。

 また、バンパーは正逆反転機構とつながっており、バンパーが障害物に接触した際、あるいはバンパー先端下部に接触部が存在しない場合に、この機構が作動し、進行方向を切り替える。

 図12に、ロボットクリーナーの動作原理を示す。

ロボットクリーナーの原理 図12 ロボットクリーナーの原理[クリックで拡大]

 ご覧の通り、1つのバッテリーで、1つのモーターを動かしている。そして、モーターが発生したトルクを、ギアを介して、走行系とクリーナー系に分配している。なお、本稿では正逆反転機構の説明は割愛する。

 図12を基に、これまで取り上げてきたミニ四駆およびコードレスクリーナーの知見を活用して、ロボットクリーナーのモデルを作成すると、図13のようになる。

コードレスクリーナーのモデリング例 図13 コードレスクリーナーのモデリング例[クリックで拡大]

 走行系はミニ四駆、クリーナー系はコードレスクリーナーとモデルとしては同じとなる。異なるのは、1つの電源(バッテリー)と1つのモーターを共用しており、モーターからのトルクおよび回転数が、2系統のギアを通じて、一部は走行系へ、一部はクリーナー系へと分配されている点である。すなわち、ギアの構成、走行系およびクリーナー系の負荷によって、各系統へのトルク(電流)が配分される構造となっている。

 図13のモデルをModelica MSLで表現した例を図14に示す。

「Modelica MSL」によるロボットクリーナーの表現例 図14 「Modelica MSL」によるロボットクリーナーの表現例[クリックで拡大]


 次回は、本連載の最終回として、これまで言い足りなかった内容について取り上げる。 (次回へ続く

参考文献:

  • [1]学研 大人の科学 Best Section No.5 卓上ロボット掃除機(2012)

⇒連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール:

大富浩一(https://1dcae.jp/profile/

1Dモデリングの方法と事例(日本機械学会)

日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.