これらの開発を推進するため、さまざまな実証実験空間を研究開発拠点内にも用意している。例えば、温湿度や照明、音など室内環境が統制された状態での心と体の状態を見える化する心理実験室を用意している他、睡眠空間や移動空間での設備も用意している。
睡眠空間では、光や音、風、香りによる睡眠制御で疲労回復度合いを計測する実証などを行っている。社内メンバーでの検証の他、病院の看護師を対象とした計測実証も行っているという。「現在は複数の施設で約60人を対象に実証している。おおむね好評だが、心拍なども接触型のセンサーを付けるわけにはいかないことなどから、計測項目や精度に限界があることに加え、労働サイクルの影響などもあるため、さらなる検証を積み重ねていく」(担当者)。
移動体については、自動車を改造し光、音、振動、香りによるアクチュエーションで、企業のエグゼクティブなどが短い自動車での移動時間にリラックスできるようにする手法の検証などを行っている。
また、研究開発を行うオフィス空間そのものを実証の場としても活用している。執務空間において、映像や光、音、気流、香り、ミストなどの五感刺激で集中力や創造性、交流促進を高める効果について評価している。「この環境で働いてみて、実際に交流面では特に顕著な効果があったと実感している」(担当者)としている。
これらで実証した技術の製品化や事業化について、大林氏は「オフィスに関するものは既に研究施設内で活用しておりほぼ実用段階だ。また、移動体での検証については既にパナソニック オートモーティブシステムズ(PAS)と連携し早ければ2026年中に製品化できるかもしれない」と語っている。
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