　開発を進めている技術が、人の心身の状態を見える化するためのセンシングと人のモデル化だ。身体の向きや動き、心拍や呼吸などの体の反応と、心がどう感じるかについてのアンケートを用い、人の心と体の状態を見える化する。その1つとして、ストレス種類の判別がある。ストレス種別を心拍変化の違いのみで75％の精度で判別し、自動で測定できる技術を開発している。また、心拍や呼吸、身体の動きを分析することで瞑想状態のスコア化や、これらと温度や照明、音環境の関連性を分析した集中状態のスコア化などの技術を開発している。

ストレス種別の判別（左）と集中状態のスコア化（右）［クリックで拡大］出所：パナソニックHD

　これらでセンシングした状態を基に、五感への働きかけを行うアクチュエーション技術の開発も進めている。音や映像、温湿度、香り、振動刺激など、最適に人の感覚にアプローチできるようにする技術を研究している。

五感に働きかけるアクチュエーション技術［クリックで拡大］出所：パナソニックHD

　特にパナソニックグループが得意としているのが「音」に関する技術だ。大自然に満ちるサウンドを都市空間で再現する「バイオフィリック・ハイレゾサウンド」としてさまざまな要素技術を開発している。例えば、音の到来方向や響きを均一化することで、音に包まれるような感覚を演出し、リラックス感を醸成したり、広帯域音源の再生によりα波（リラックス時に優勢となる脳波）を増加させたりする。

バイオフィリック・ハイレゾサウンドの概要［クリックで拡大］出所：パナソニックHD

　また、音と視覚効果のトータル設計を行うことで、独自調査によると「アイデアの出しやすさ」が45％改善、「集中のしやすさ」が27％改善、「モチベーション」が25％改善したという。さらに、人に聞こえない音にも人体や心理に影響を与える「ハイパーソニック効果」があることから、これらを生かした「効能サウンド」という技術開発も進めている。非可聴音も含むハイレゾ音源を活用することでリラックス効果やストレス低減、免疫力向上に役立てていく。

　「パナソニックグループにはオーディオの技術者や知見なども数多くあり、音の領域でのアクチュエーションについては強みがある。他の領域では今後の検証が必要な技術も多いが、実証試験を中心に解き明かしていく」と大林氏は語っている。

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