東京大学は、ジャイロイド構造を持つ金属有機構造体(MOF)で、対称性の変化を伴う相転移を発見した。このMOFが温度が低下すると結晶の対称性が低下し、応力を加えている間だけ電気分極を生じる圧電性が発現することも分かった。
東京大学は2025年3月25日、ジャイロイド構造を持つ金属有機構造体(MOF)で、対称性の変化を伴う相転移を発見したと発表した。名古屋大学、高輝度光科学研究センター、名古屋工業大学、理化学研究所との共同研究による成果だ。
対称心を持たない結晶点群のうち、点群432は電気分極を示さず、ジャイロイドと呼ばれる3次元周期極小曲面と同じ対称性を有する。研究グループは、コバルト(Co)と硫黄(S)が互いに逆向きのジャイロイドネットワークを形成する点群432に属するMOFが、応力を加えている間だけ電気分極を生じる圧電性を発揮することを明らかにした。
このMOFは室温で上向きと下向きの硫酸イオン(SO42−)が等確率で存在するが、温度が低下すると規則的に秩序化する。立方晶格子を維持したまま、結晶の対称性が低下し、電気双極子モーメントが出現。電気分極測定を実施したところ、非圧電群432から圧電群23へ変化していることが分かった。
変化後のSO42−分子が持つ電気双極子モーメントは、ジャイロイドネットワーク上で3次元的な螺旋(らせん)構造を形成しており、これが圧電応答を誘因していると考えられる。
圧電体は、センサーやモーターなどに応用されている電子材料だ。今回用いたMOFは、結晶格子のひずみを最小限に抑えながら秩序化でき、耐久性向上が期待される。
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