2035年の世界の自動運転システム市場は2023年対比1.5倍超に成長自動運転技術

矢野経済研究所は、世界のADAS/自動運転システム市場を調査し、市場状況や採用動向、個別メーカーの事業戦略を発表した。2035年の同市場は23年対比1.5倍超の8399万8000台に成長すると見込む。

» 2025年03月18日 09時30分 公開
[MONOist]

 矢野経済研究所は、世界のADAS(先進運転支援システム)および自動運転システムに関する市場調査を実施した。調査期間は2024年4~9月、調査対象は自動車メーカー、カーエレクトロニクスメーカー、半導体メーカー、センサーメーカーなど。

 今回の調査では、市場状況や採用動向、個別メーカーの事業戦略について明らかにした。矢野経済研究所は、2035年の同市場は2023年比で1.5倍超である8399万8000台に成長すると予測した。

キャプション ADAS/自動運転システムの世界市場規模予測[クリックで拡大] 出所:矢野経済研究所

 2023年における世界のADASおよび自動運転システムの搭載台数は5355万5000台であった。自動運転のSAEレベル別の内訳で見ると、レベル1(L1:運転支援)が2327万7000台、レベル2(L2:運転支援)が2846万台、レベル2+(高速道路限定の手放し運転・一般道レベル2運転支援機能を含む L2+:運転支援)は181万台、レベル3(L3:条件付自動運転)は8000台であった。

 レベル2(L2:運転支援)が全体の53.1%を占めており、高速道路におけるACC(車間距離制御装置)、LKS/LKA(車線維持補助装置)を同時に稼働させる運転支援機能の標準設定が進んだ。ADAS用フロントカメラおよびレーダーの性能も向上し、自動車の前側方・後側方を検知するためにコーナーレーダーの活用が増加したことから、車両の運転支援機能の能力が改善してきている。

 レベル2+(L2+:運転支援)に関しては、高速道路限定の手放し運転(高速道路ハンズオフ)のみならず、レベル2運転支援を一般道に適用した機能(L2+)の実装化が始まる。中国でNOA(Navigation On Autopilot)と呼ばれている一般道L2+運転支援機能は、中国新興自動車メーカーが製造する高級BEV(電気自動車)での搭載が進んでいる。レベル3(L3:条件付自動運転)については、欧州高級車メーカーによるドイツ、米国でのオプション設定があるが、2023年の世界搭載台数は8000台にとどまった。

 ADASの標準搭載は日米欧中で進んでおり、2024年にレベル2(L2:運転支援)の世界搭載台数は3025万5000台に到達し、レベル1(L1:運転支援)の2276万台を超えると予測した。2025年も引き続きレベル2が市場をけん引し、ADAS/自動運転システムの世界搭載台数は6002万6000台に増加すると見込む。

 レベル別では、レベル2(L2:運転支援)が3218万台で全体の53.6%を占めると見込む。レベル1(L1:運転支援)が2006万2000台(同33.4%)、レベル2+(L2+:運転支援)が745万9000台(同12.4%)、レベル3(L3:条件付自動運転)が32万5000台(同0.5%)と予想した。レベル4(L4:高度自動運転)に関してはMaaS(Mobility as a Service)向け商用車の研究開発が盛んであるが、主に開発されているのは公道での実験用車両であるため、2025年の量産台数は僅少であると予測する。

 2035年のADAS/自動運転システムの世界搭載台数は8399万8000台に拡大すると見込む。最大はレベル2+(L2+:運転支援)の3181万台、全体に占める割合は37.9%となる。2020年代後半からレベル2+(L2+:運転支援)の搭載台数が日米欧中で増え始め、2030年はレベル1(L1:運転支援)の世界搭載台数(1469万2000台)を超えて2255万4000台に達するとしている。

 レベル1(L1:運転支援)とレベル2(L2:運転支援)に関しては日米欧中の乗用車で搭載が浸透するため、2020年代後半からはASEAN(東南アジア諸国連合)地域が需要地となる。2026年からASEAN-NCAP(新車アセスメントプログラム)において、運転支援系のレーティング(評価)が変更になる計画がある。このため、2030年以降はASEANがL1、L2の市場を引っ張り、2035年の世界市場規模はL1が1396万8000台、L2が2563万5000台になると見込む。

 レベル3(L3:条件付自動運転)は欧州、中国において市場が形成され、2030年の世界搭載台数は336万9000台、2035年には652万台に達すると見込む。2030年以降は、高級車の一部で高速道路において時速120km以上に対応したL3の自動運転システムの搭載が進み、システムからのテイクオーバー(自動運転システムからドライバーへの運転権限を委譲)をドライバーが引き受ける場合は「L3」から「L2+(運転支援)」に自動的に切り替わるシステムが導入されると予測する。

 レベル4(L4:高度自動運転)は、V2V(Vehicle to Vehicle:車車間通信)やV2I(Vehicle to Infrastructure:路車間通信)が整い、自動運転用ソフトウェアの開発が進む2031年以降に市場が形成される。2030年のL4の世界搭載台数は80万台、2035年は606万5000台に拡大すると見込む。なお、L4以上の商用車(ロボタクシー、シャトルバス、無人配送車)は含んでいない。

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