「グリーン by サーキュラー」における未利用エネルギーの活用では、独自の複合磁気ワイヤを用いたコイル型の発電素子と、発電素子にかかる磁界を増大させる磁気回路から成る電磁誘導発電モジュールを開発し、従来の電磁誘導発電素子の1万倍以上の高出力を実現した。
この電磁誘導発電モジュールは、磁気回路の磁石や磁気誘導ヨークの配置を最適化することで、非常に低速かつ軽い力の動きでも効率の良い発電が行える。磁気誘導ヨークとは、磁力線が空気よりも磁性体の中を通りやすい性質を利用して、磁石から発電素子により多くの磁力線を誘導するための磁性体の構造体を指す。
同モジュールを用いて床板の上を人が通過した際に発電する床発電装置を試作し、実証実験を行った結果、従来の圧電素子を用いた床発電装置の100倍となる200mWの発電量を確認した。
試作した床発電装置の床板と発電素子は非接触で、従来の圧電素子の課題だった、継続使用により劣化が発生しない世界初の構造だという。この装置と温度センサーおよび無線通信対応の通信モジュールを接続して構築した「床発電IoTセンサー」の実証実験では、1回踏んだ時の発電量で温度データを無線通信でPCなどに送信できることを確認した。「つまり、電源や通信線を使用しないIoT(モノのインターネット)センサーの実証に成功している」(三菱電機 先端技術総合研究所の説明員)。
また、うちわであおいだ風(風速2〜3m/s)で回転させた風車(かざぐるま)の動きでこの電磁誘導発電モジュールが発電できることも確かめている。
同モジュールは、そよ風や弱い水流、人が床を踏む動きなどを利用して発電が行えるため、配線と電池交換が不要な低消費電力(数mW程度)の機器/センサー向け電源としての活用が期待できる。今後、同モジュールの発電量向上を図るとともに、センサーなどを接続し配電/電池レスIoTセンサーとして実証実験を行い2027年度までに実用化を目指す。
近年、国内の企業には、地球規模での温暖化やエネルギー需要の拡大に対応するために、省エネルギー化および再生可能エネルギー導入の推進が求められている。このような中、光や熱、振動、電波など、多様な形態で世の中に存在する微小なエネルギーを電気エネルギーに変換して活用する「環境発電(エネルギーハーベスティング)」が注目されている。しかし、環境発電は一般的に発電量が非常に微弱で不安定なため、発電できるシーンが限られていることが課題だった。
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