三菱電機は、兵庫県尼崎市の先端技術総合研究所で「グリーン関連研究開発事例 視察会」を開催し、オペレーションのノウハウなしで静電選別が行える検証機を披露した。
三菱電機は2025年2月19日、兵庫県尼崎市の先端技術総合研究所で「グリーン関連研究開発事例 視察会」を開催した。
先端技術総合研究所は三菱電機の開発本部に所属する施設で、システム/ソリューション、機器、デバイス/材料に関するさまざまな技術を保有している。同研究所は保有する技術に新技術を組み合わせることで社会や事業に大きな影響を与える技術「フォアサイトテクノロジー」の開発を推進している。
同研究所では、拡大するエネルギー需要に対応しつつも環境負荷を抑えて自然と共存できる持続可能な社会の実現に向けて、「グリーン by エレクトロニクス」「グリーン by デジタル」「グリーン by サーキュラー」といった3つのテーマを柱にした研究開発も進めている。
三菱電機 執行役員 先端技術総合研究所 所長の高林幹夫氏は「研究リソースの投入割合は現状、『グリーン by エレクトロニクス』が85%で、残りの15%を『グリーン by デジタル』と『グリーン by サーキュラー』で分けている。2030年までに、2024年と比べて『グリーン by デジタル』と『グリーン by サーキュラー』への研究リソースの投入割合を4倍とする。これにより、『グリーン by デジタル』と『グリーン by サーキュラー』の研究開発も強化していく」と述べた。
コアコンポーネントの高効率化/小型化などによる機器の省エネ化や電化を目的とした「グリーン by エレクトロニクス」では、これまでシリコン(Si)やシリコンカーバイド(SiC)を用いたパワー半導体などを活用し三菱電機の主要機器(エアコン、FA機器、自動車機器など)の省エネ化/高効率化を進めていた。
今後は、自動車や再生エネルギー、民生分野への拡大に向けてSiCの低コスト化、低抵抗化、高耐電圧化を進める。SiCと比べて、高耐電圧、低損失、低コストで製造できると期待される次世代のウエハー材料である酸化ガリウム(Ga2O3)の材料技術も開発する。この酸化ガリウム材料技術開発は、新エネルギー・産業技術総合研究所(NEDO)の「経済安全保障重要技術育成プログラム/高出力・高効率なパワーデバイス/高周波デバイス向け材料技術開発」に2024年6月に採択されており、NEDOの支援を受けて行う。
先進デジタル技術の活用によりエネルギー効率の向上や再エネ利用の拡大に貢献することを目的とした「グリーン by デジタル」では、これまで電力の需給予測や最適制御技術を開発し、電気設備やエネルギーマネジメントシステム(EMS)への適用実績を重ねてきた。今後は、電力や熱、水素を含めた全体のマネジメントシステムの開発を進める。
高林氏は「こういったマネジメントシステムの開発では三菱電機のデジタル基盤『Serendie(セレンディー)』も活用している。一例として、既に開発し提供を開始した『熱関連トータルソリューション』を紹介する。熱関連トータルソリューションはセレンディーを用いて、顧客の課題に応じたコンサルティングと、データ分析による現状把握や施策の提案、デジタルシミュレーションによる導入効果の試算を行う。その後、ヒートポンプチラーやエコキュートなどの給湯/産業冷熱機器、設備設計/計装制御設計などの熱エンジニアリング技術を駆使した設備導入に加えて、電力と熱の最適運用を行うEMSの技術を組み合わせて提供することで、顧客の課題を解決する」と話す。現在は早稲田大学と共同で建物内の熱マネジメントシステムの開発を行っている。
加えて、開発した「ビル向け快適気流制御技術」をデータセンター用の省エネソリューションとして展開している。ビル向け快適気流制御技術は、室内の3Dモデルを自動構築し、気流、温度分布、換気効果を可視化する。同技術をデータセンターに活用することで、省エネな空調の自動制御や気流改善の提案が行え、サーバ室内のホットスポットや過剰空調による運用の無駄を見える化できる。
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