欧州を中心にデータ共有圏の動向や日本へのインパクトについて解説する本連載。第6回は、製造業のデータ共有圏であるManufacturing-Xを紹介する。
本連載では、「加速するデータ共有圏/データスペースの最新動向と日本の産業へのインパクト」をテーマとして、データ共有圏/データスペースの動向やインパクト、IDSA(International Data Space Association)、GAIA-X、Catena-X、Manufacturing-Xなどの鍵となる取り組みを解説していく。連載第6回となる今回は、製造業のデータ連携の取り組みであるManufacturing-Xを紹介する。
データ共有圏はデータスペース(Data Space)とも呼ばれている。データの共有/交換は、従来はプラットフォームを介したデータ共有が一般的であり、提供されたデータの活用やマネタイズについてはプラットフォーム側が実施し、データ所有者は関与できないものだった。
一方で、現在欧州発で検討が進むデータ共有圏=データスペースについては、データの出し手と受け手をコネクターで直接つなぐ分散型の共有となる。コネクターを活用し、データ所有者と利用者が直接データ共有を実施する。データ主権が担保され、データ所有者が「他者がデータをどのように、いつ、いくらで利用できるかを自己決定することができる」のが特徴だ。
データ共有圏では多くの組織が動いている。本連載の中でそれぞれの組織の動向は詳述するが、ここでは大きくその位置付けを示したい。まず、主要な組織としては大きく2つに分かれる。業界共通での仕組み作りを担うのがIDSA(International Data Space Association)とGAIA-Xだ。
その土台の上に、自動車業界ではCatena-X、製造業全般においてはManufacturing-Xなど業界ごとの仕組みづくりを担う組織の活動が位置付けられる。後述するCofinity-Xは位置付けが他と異なり、Catena-Xの仕組みの上で個別のソリューションを展開するサービス企業となる。その中で、本記事で詳述するのがManufacturing-Xだ。
Manufacturing-Xはドイツ政府が資金提供しているイニシアチブであり、デジタル化を通じてドイツ、欧州、世界の製造業の競争力、回復力、持続可能性を高めることを目的としている。既に製造業の中でも、自動車業界においてはCatena-X(自動車業界のデータ共有エコシステム構築に向けた取り組み)が存在するが、Manufacturing-Xでは自動車を含めた製造業全体が対象となる。Catena-Xを土台(Blue Print:設計図)としつつも、製造業のセクター横断で進めていくイニシアチブとなっている。
ドイツにおいてManufacturing-Xは、Manufacturing-X Council Germany(MXCG)によって推進される。MXCGの目的は下記の通りだ。
プラットフォームインダストリー4.0の事務局によってサポートされ、連邦経済気候保護省(BMWK)、連邦教育研究省(BMBF)が支援している。BASF、Deutsche Telekom、Festo、フエニックス・コンタクト、SAP、Schunk、Siemensと作業グループの責任者によって活動が推進されている。
Manufacturing-Xは(1)戦略ゴール、(2)ビジネスモデル、(3)業界横断ユースケース、(4)能力、(5)土台、(6)規制/制約の6階層で定義されるフレームワークに沿って取り組みが進む。
また、ユースケースとしては大きく分けて、(1)製品イノベーションのための連携、(2)製造最適化/自律工場、(3)サプライチェーン透明性/レジリエンス、(4)エネルギー/CO2管理が掲げられており、それぞれのプロジェクトの中で実現が図られている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.