データ主権を守りながら共有していく、IDSAとは?加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(3)(1/6 ページ)

本連載では、「加速するデータ共有圏:Catena-XやManufacturing-Xなどの最新動向と日本への産業へのインパクト」をテーマとして、データ共有圏の動向やインパクト、IDSA、GAIA-X、Catena-X、Manufacturing-Xなどの鍵となる取り組みを解説していく。今回は第3回としてIDSAを紹介する。

» 2024年08月30日 06時00分 公開

連載概要と本記事の位置付け

 本連載では、「加速するデータ共有圏(Data space):Catena-XやManufacturing-Xなどの最新動向と日本への産業へのインパクト」をテーマとして、データ共有圏の動向やインパクト、IDSA(International Data Space Association)、GAIA-X、Catena-X、Manufacturing-Xなどの鍵となる取り組みを解説していく。今回は第3回としてIDSAを紹介する。

  • 本連載の構成
    • 第1回:ハノーバーメッセ2023におけるデータ共有圏の最新動向:Catena-X/Cofinity-X/Manufacturing-X
    • 第2回:データ共有圏が進む背景、データ共有のインパクト
    • 【今回】第3回:データ主権を掲げるIDSA(International Data Space Association)とは?
    • 第4回:クラウドでの分散型共有を図るGAIA-Xとは?
    • 第5回:自動車でのデータ共有圏:Catena-X、Cofinity-Xとは?
    • 第6回:製造業におけるデータ共有圏:Manufacturing-Xとは?
    • 第7回:米国(MOBI)や中国(Huaweiなど)、アジアでの取り組み
    • 第8回:日本におけるデータ共有の取り組み(1):DATA-EX、IVI、RRI
    • 第9回:日本におけるデータ共有の取り組み(2):Ouranos Ecosystem
    • 第10回:求められる日本のデータ共有圏戦略

→連載「加速するデータ共有圏と日本へのインパクト」バックナンバー

データスペース(データ共有圏)とは

 データ共有圏とは、Data Space(データスペース)とも呼ばれている。データを共有、交換する際、従来はプラットフォーム(PF)を介したデータ共有であり、提供されたデータの活用やマネタイズについてはプラットフォーム側が実施しており、データ所有者が関与できないものであった。

 一方で、現在欧州発で検討が進むデータ共有圏(Data Space)については、データの出し手と受け手をコネクターで直接つなぐ分散型の共有となる。コネクターを活用し、データ所有者と利用者が直接データ共有を実施する。データ主権が担保され、データ所有者が「他者がデータをどのように、いつ、いくらで利用できるかを自己決定することができる」のが特徴だ。

図1:欧州が展開しているデータスペース[クリックで拡大] 出所:筆者作成

データスペース(データ共有圏)を展開する組織とIDSAの位置付け

 データ共有圏では多くの組織が動いている。連載の中でそれぞれの組織の動向は詳述するが、ここでは大きくその位置付けを示したい。まず主要な組織としては2つに分かれる。業界共通での仕組みづくりを担うのがIDSA(International Data Space Association)、GAIA-Xだ。

 その土台の上に、自動車業界ではCatena-X、製造業全般においてはManufacturing-Xなど業界ごとの仕組みづくりを担う組織の活動がある。後述するCofinity-Xは位置付けが他と異なり、Catena-Xの仕組みの上で個別のソリューションを展開するサービス企業だ。その中で、本記事で詳述するのがInternational Data Space Association(IDSA)だ。

図2:データスペースを展開する主要組織とIDSAの位置付け[クリックで拡大] 出所:筆者作成

IDSAの活動

 2014年にドイツのフラウンフォーファー研究所が「Industrial Data Space(IDS)プロジェクト」を開始し、2015年にInternational data spacesに改称。2017年にデータ共有のための標準やルール、アーキテクチャを策定する非営利組織として設立された。現在では、28カ国の150を超える企業や組織が加入している。IDSAのボードメンバーとしては、フラウンフォーファー研究所、FIWARE、フォルクスワーゲン、マイクロソフト、ドイツテレコム、PwC、Atos、SICK、TNO、NTTコミュニケーションズなどが名を連ねている。

図3:IDSAの参画企業[クリックで拡大] 出所:IDSAプレゼンテーション資料

 欧州をはじめ世界中の国にハブを拡大しており、データ主権の意識の醸成や、知識の伝達、IDSAメンバーの募集、IDSベースのアプリケーションの普及を目的に国境を超えてIDS標準を広げる仲間づくりを行っている。欧州外では、日本は東京大学とDSA(Data Society Alliance)がIDSAハブとして連携している他、マレーシアのIDSAハブではDigital Connect Society(DCS)が、中国のIDSAコンピテンスセンターではChina Future Internet Engineering Center(CFIEC)が、IDSA リサーチラボ中国では上海交通大学がパートナーとして連携している。

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