グローバル連携の下で広がる製造業のデータ共有圏「Manufacturing-X」とは?加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(6)(2/3 ページ)

» 2025年02月26日 06時00分 公開

International Manufacturing-X協議会(IMX Council)

 2024年11月には製造業関連の各国/地域の組織が集まり、Manufacturing-Xの取り組みをグローバルに広げるためのInternational Manufacturing-X協議会が発足している。発足メンバーとしては下記の通りだ。

  • Alliance Industrie du Futur(フランス)
  • CESMII(米国)
  • Confindustria(イタリア)
  • KOSMO(韓国)
  • NGen(カナダ)
  • Plattform Industrie 4.0 Osterreich(オーストリア)
  • Plattform Industrie 4.0(ドイツ)
  • RRI:Robot Revolution & Industrial IoT Initiative(日本)
  • Smart Industry Program(オランダ)
図7 図7 International Manufacturing-X協議会メンバー[クリックで拡大] 出所:筆者作成

Manufacturing-Xで推進されている主要プロジェクト

 現在、Manufacturing-Xのコンセプトのもと、具体的に取り組みが進むプロジェクトはCatena-Xの他、下記のものが挙げられる。主なプロジェクトの詳細について後述する。

領域 データ連携プロジェクト
半導体 Semiconductor-Xプロジェクト
航空 Aerospace-Xプロジェクト
化学 Chem-Xプロジェクト
プロセス産業 Process-Xプロジェクト
ロボット Robot-Xプロジェクト
工場/工作機械 Factory-Xプロジェクト
ヘルスケア業界 HealthTrack-Xプロジェクト
持続可能性 Decide4ECO プロジェクト
相互運用性 DAVIDプロジェクト
表1 Manufacturing-Xで進むプロジェクト例 出所:Manufacturing-X

【工場/工作機械】Factory-Xの活動

 Factory-Xは、Catena-XとPlatform Industrie4.0のコンセプトに基づいて、工場の設備企業や、オペレータ向けにオープンなデータ連携エコシステムを構築することを目指している。ドイツ経済気候対策省が資金提供しているプロジェクトで、SiemensやSAPをリーダーに、46のパートナーが参画しているコンソーシアムだ。日本企業としてはDMG森精機が参加している。

  • コンソーシアムリーダー:SAP、Siemens
  • パートナー:BASF SE、Catena-X、DMG MORIデジタル(DMG森精機の子会社)、フラウンフォーファー研究機構、オープンインダストリー4.0アライアンス、イグス、フエニックス・コンタクト、ジック、TRUMPF、TUV SUD、T-システムズ、VDMAなど
  • 関連パートナー:ARENA2036、ベッコフ、デジタルデータチェーンコンソーシアム、Industrial Digital Twin consortium、Robert Bosch、ZVEIなど

 Factory-Xのデータ連携を通じたユースケースとしては下記の11の取り組みが進む。

ユースケース チャレンジ ゴール
【#1】統合ツールチェーンと共同エンジニアリング シームレスに統合され相互運用可能なエンジニアリングツールチェーンによるエンジニアリングコラボレーションの改善の必要性 標準化されたエンジニアリングツールの統合とエンジニアリング自動化ソリューション
【#2】情報更新および変更サービス 情報とソフトウェアの更新に関する透明性と一貫性 自動化された信頼性の高いアップデートサービスと共通デバイス管理のためのソリューション
【#3】共同情報ロジスティクス 企業間で資産情報を交換するための標準の欠如 相互運用可能な情報提供サービスのためのソリューション
【#4】状態監視主導サービス データ共有と分析の障害により、現状監視および関連サービスで潜在能力が十分に発揮されていない データ主権とコスト管理を維持しながら、プロセスとサービスを改善する
【#5】モジュラー生産 生産のセットアップと制御を簡素化 自己記述型マシンと分散型生産プロセス制御のためのソリューション
【#6】サービスとしての製造-オンデマンド製造 中小企業がデジタルマーケットプレースに参加できるようにする サービスとしての製造における入札および注文実行プロセスのデジタル化と自動化
【#7】自律型オペレーションアズアサービス 機械や工場の自律運転のための方法とツールの必要性 スマートなリモート監視と操作のためのソリューション
【#8】トレーサビリティー 工場内およびサプライチェーン全体にわたるデータの追跡可能性 材料、部品、製品の履歴と使用状況を管理するソリューション
【#9】エネルギー消費と負荷管理 エネルギー消費とエネルギーコストの削減 詳細なエネルギー監視、省エネ機能、最適化されたエネルギーおよび負荷管理のためのソリューション
【#10】カーボンフットプリント管理 CO2排出量を削減し、CO2ニュートラルになる サプライチェーン全体にわたるCO2透明性のソリューション
【#11】循環型経済 完全な製品透明性を利用して工業製品をセカンドライフに移す 再製造、改修、リサイクル対策を評価するソリューション
表2 Factory-Xのデータ連携を通じたユースケース 出所:Factory-X

【半導体業界】Semiconductor-Xの活動

 Semiconductor-Xは、Catena-X/Gaia-Xのアーキテクチャを半導体業界に適用させ、半導体業界でのデータ連携を促進していく取り組みだ。データスペースを通じて半導体業界における効率的、持続可能、かつ回復力のある運用を実現し、バリューチェーンのトレーサビリティー向上を目指す。日本からは半導体材料企業のレゾナックが所属している。欧州委員会や、ドイツ経済気候対策省が資金提供しているプロジェクトだ。

  • プロジェクトパートナー:Intelドイツ、フランフォーファー研究機構、インフィニオンテクノロジーズ、メルク、SAP、Robert Bosch、Siemensなど
  • 関連パートナー:DHL、ドイツ空軍、レゾナック、Siemens、テキサスインスツルメンツ、ZVEIなど

 Semiconductor-Xとしては下記の3つのクラスターが存在し、各種取り組みがなされている。

クラスター 概要
【#1】異種統合エコシステムのための回復力のあるバリューチェーン パッケージング技術に関わるパートナーの包括的な異種統合を通じて、競争力と回復力のあるバリュー チェーンを構築する。半導体業界の1000を超える処理ステップと70を超える国をデータ連携で接続する
【#2】レジリエントネットワークノード-工場運営を最適化するデジタル統合 ネットワークノード内での企業間データ交換の概念、セマンティックデータモデルおよびサービスの開発、データ空間内での工場およびサプライチェーン資産のデータとサービスの統合を目指す
【#3】持続可能性 LCA(ライフサイクルアセスメント)データセットをデジタルツインのセマンティックサブモデルに保存するためのLCAの方法論の開発。機械学習と統計数学の手法による半導体デジタルツインの最適化
表3 Semiconductor-Xのクラスター 出所:Semiconductor-X

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