MONOisti 2017年に打ち出した自動化コンセプト「i3-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)※」の現状における手応えを教えてください。
※)「integrated(統合的に)」「intelligent(知能的に)」「innovative(革新的に)」の3つのステップで進める安川電機の次世代の自動化コンセプト。製造現場のセルやシステム(設備機器など)の機器や装置のデータをintegrated(統合的)に視える化してIT層へとつなぎ、収集したデータはintelligent(知能的)に分析/解析して活用し、稼働している設備の効率向上や生産品質の安定といったinnovative(革新的)な状態にする。
小川 i3-Mechatronicsというソリューションのコンセプトを打ち出し、それを支える製品として「YRMコントローラー」を、次に自律ロボット「MOTOMAN-NEXT」を出し、現場の自動化領域を拡張する新たな考え方や製品を加えてきた。
コントローラーのプラットフォームとして、YRMコントローラーはハードウェアの共通性などにこだわってグローバルで展開してしようとしている。その中で、YRMコントローラーに関しては米国での反響が大きかった。
米国は半導体、工作機械、ゼネラルモーション(一般産業)という主に3つのカテゴリーでセグメントしていたが、YRMコントローラーで裾野に当たるゼネラルモーションに一手が打ち始められている。
それは、欧米向けに足りなかった技術が加わったからだ。一番大きいのはネットワークセーフティへの対応だ。これは欧米ではもう当たり前になっている。もともと性能が評価されてきた中で、足りなかったものが加われば期待感が一気に現実化する。
YRMコントローラーの“足回り”はサーボモーターだ。われわれのサーボモーターは米国では半導体産業で特に評価されてきた。そこにさらに、ゼネラルモーション領域にコントローラーとして入っていくことができれば、足回りであるサーボモーターにおいてさらに勇気をもって攻めていくことができる。サーボモーターに関して評価してくれていた方々が、より安川電機の方を向いてくれる。
この影響は大きい。ゼネラルモーション領域には自動車も食品もある。同領域でわれわれのシェアが広がっていくチャンスが見えてきて、今後が楽しみだ。
また、欧米は連動する傾向がある。米国でうまくいけば、存在感を占めす事例が米国にあるという意味で、欧州も勇気付けられる。
MONOist NVIDIAとはパートナー関係にありますが、AIとロボットの融合についてはどのように考えていますか。
小川 AIはロボット産業においても重要なブレークスルーの要因になると思っている。市場全体の期待値、ポテンシャルから見て、現状のロボット産業が実現できていることはほんのわずかだ。
それは今に始まったことではないし、その期待に応えてわれわれのビジネスチャンスにしたいとずっと思ってきた。これまでとアプローチの仕方を変えていかないと導入の領域は広がっていかないと考えており、そのためにMOTOMAN-NEXTもリリースした。AIも1つの武器になる。
AIから見てもロボットは大きなポテンシャルを持っている。入口は違っても同じようなゴールを持っているプレイヤーの足並みが、そろえられる状態ができてきた。その一例がデジタルツインだ。
MONOist MOTOMAN-NEXTの反響はいかがですか。
小川 手応えはある。ただ、浸透させるには(現場での)事実が要る。事実が積み上がっていけば加速する。AIやクラウドコンピューティングだけが先行しても、フィジカルな世界が追従していかなければ意味がない。どちらか一方だけで囲い込むのも無理がある。
それらを含めてエコシステムとして市場を作らなければいけない。一朝一夕にできるはずがない。ただ、動き出しさえすればその後の加速力は大きい。
今後、デジタル化が加速していけば、データがもたらす価値は必然的に認識されるようになる。i3-Mechatronicsのコンセプトの広がりにもつながってくる。
MONOist 2025年に向けた抱負をお願いします。
小川 見通しが付きにくい状況だからこそ、やるべきことをやって見えてきた、成果の刈り取りをしていきたい。付加価値を高める活動、生産の合理性や各地域の自立性を高める投資をしてきた。あとは刈り取るだけだ。経済という市況感が上がっていけば、くくりとしては2025年だが、数カ月や1年ずれたとしても、そこに向かっていく状態は作れている。
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