2024年の状況および2025年の見通しについて、安川電機 代表取締役社長の小川昌寛氏に話を聞いた。
揺れ動く世界情勢に加え、AI(人工知能)などの新技術も台頭。FA関連企業もかじ取りの難しさは増すばかりだ。2024年の振り返りや2025年の見通しについて、安川電機 代表取締役社長の小川昌寛氏に話を聞いた。
MONOist 2024年を振り返って市場環境をどのように捉えていますか。
小川氏(以下、敬称略) 半導体と中国市場の動向が大きなポイントになると見て2024年は始まった。半導体に関しては、AIドリブンとして捉えると悪い状態ではないが、濃淡があるのも事実だ。
期待値をどこに置くかによって見立ては変わるが、大手半導体メーカーが増産を見送ったこともあり、期待より少し弱かった。ただ、市場が動いていることは確認できたのは良かった。
中国に関しては、大きな成長を期待していたわけではなかったが、想定よりも厳しかった。ただ、“衰退”しているわけではない。期待値として、“そういうもの”として覚悟を持ってやっていけばいいということがはっきりした。その点では、悪い状態ではない。
この先、小刻みに上下することはないだろうし、今後の進め方もはっきりした。来季に向けた受注の動向をしっかりと見極める中で、覚悟の置き方が決まってくる。
利益目標を最優先に置いているが、構造的にこうなれば達成できるという見通しもある。可能性がある限りこだわっていきたい。
MONOist 中国市場の回復は難しい状況でしょうか。
小川 今後のポテンシャルが中国にないわけでない。実は見えてない、潜在化しているポテンシャルはあるので、それを見誤ってはいけない。
中国の半導体産業も、紆余曲折はあっても持続するだろうし、米国がリードしているように見えるAIの領域においても、中国で興るに決まっている。われわれが現地で展開している事業に新たに加わってくるような領域も当然興るだろう。それらをしっかりと補足して、事業の成長につなげられるようにしなければならない。
はっきりしているのは、貿易摩擦で分断されるからこそ、米中では鏡のように同じようなことが起こるということだ。そこをどう捉えて、獲得するかというのは、まだこれからだが、従来通りの中国の見立てでは絶対に道を誤る。
ただ、日本人がそれらを捉えることは難しいし、捉えることができたとして実際の行動に移せるのかどうかも難しい。
われわれは需要地生産という表現で、それぞれの国で起きた出来事に向き合おうとしている。中国においては、中国人のチャネリングの考え方やリレーションの作り方が大事になってくる。現地に自立性を求めてきたことが生かせる状態になる。
MONOist 米国への製造業回帰の動きを感じますか。
小川 目立った動きは表にはあまり出てこないが、少しずつそういう方向に向かっている。ただ、時間がかかるため、その場にいたらすぐには気が付かないようなことも、長い目で見たら変化が起きている。
日本もその方向に動くだろうか、ポテンシャルやボリューム感として見ると、圧倒的に米国の方が大きい。日本と米国では米国の方が変化量が大きい。
MONOist その他の地域の動きはどうでしょうか。
小川 欧州は輸出も含めて中国の影響が直結している。
数字への影響度はまだ高くないが、インドが本格化する確実性が見えてきた。東南アジアもじわじわと規模感は増してきている。
日本、米州、欧州、中国、アジアという5極で見ていたが、そこにインドという1つのくくりを加えて見る時代になってきた。
経済というのは流動性でもある。もともとインドは人口などの面で大きな可能性を持っていたが、インフラの整備で次なる発展への壁がだんだん低くなってきている。実際にわれわれはインドでインバーターを生産しているが、今、空調系が動いている。それは、インフラ建設に投資が進んでいるということだ。次は国力というパワーで経済を押し上げていくことにもなる。
中国の場合は世界の工場となり、内需も伸びて発展した。インドも内需は期待できるが、内需を伸ばすためには経済成長が不可欠だ。その点、ベトナムはサムスンなどが生産拠点を設けたが、ベトナムの内需がそれらの動きをけん引していたかというと、それほど感じられていない。
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