AI活用で切削加工12工程を完全自動化した5軸加工機、量産機を発売工作機械

スギノマシンと、AIソフトウェアの開発などを行うアルムは、切削加工の工程を完全自動化した次世代型切削加工機「TTMC」量産機の発売した。

» 2025年05月14日 07時00分 公開
[長沢正博MONOist]

 スギノマシンと、AI(人工知能)ソフトウェアの開発などを行うアルムは2025年5月12日、切削加工の工程を完全自動化した次世代型切削加工機「TTMC」の量産機の発売を開始したと発表した。2025年6月には7台がユーザーに初めて納入される予定だ。2030年6月までに計250台の販売を目指す。

切削加工の工程を完全自動化した次世代型切削加工機「TTMC」量産機[クリックで拡大]出所:スギノマシン

 近年、製造現場では人手不足の慢性化、熟練技術者の引退、若者の製造業離れが深刻化し、切削加工に携わる技術者も不足する事態に陥っている。

 2006年創業のアルムは、自動化装置やソフトウェアを数多く開発。2015年以降は、「製造AIと完全自動化」に力を注いでおり、10年がかりでTTMCの製品化を実現した。

 TTMCは、スギノマシンとアルムの共同開発パートナーシップに基づき開発された。TTMCの製品化に当たって、両者は開発、製造、販売、保守において協業する。TTMCの基本設計はアルムが行い、コアとなる切削ユニットにはスギノマシンが開発した同時5軸マシニングセンタ「セルフセンタSC-V30a」をTTMC用にカスタマイズしたものを採用している。

 セルフセンタSC-V30aは幅1440mmのコンパクト設計でありながら、700×500×400mmの広い加工エリアを確保している。省スペースで大きなワークを加工でき、設置面積当たりの生産性を向上させる。

スギノマシンの工場で出荷を待つ7台のTTMC[クリックで拡大]出所:スギノマシン

 アルムが独自開発したAIソフトウェア「TTMCブレイン」を搭載しており、CADデータを読み込ませるだけで、機械を動かすNCプログラムの作成、素材や工具のセット、心出し、除去領域の測定など金属、樹脂部品の切削加工の全12工程を全て自動で行う。素材や工具の摩耗状態を記録し、メーカーに自動発注する機能も備えている。

 TTMCブレインは、工程設計、NCプログラミングなど、多品種少量生産の現場ではルールベースやテンプレートでは対応できない解析を実現。リアルな工具、材料の情報を取得して状態管理を自動化するだけでなく、工程ごとの補正も自動入力する。ユーザーは、アルムクラウドにアクセスすることで、ソフトウェアのアップデートや、機械のリモートメンテンナンスも可能となっている。

 既に、半導体/機械メーカーなど4社が試験機を導入。2025年6月には7台、2026年6月には追加で18台を出荷予定で、スギノマシンが製造する予定となっている。今後は米国、インドへの海外展開も見込んでおり、スギノマシンの販売ネットワークも生かしながら、2028年6月までに国内外で90台の販売を目指す。 

左からスギノマシン 代表取締役社長の杉野良暁氏、アルム 代表取締役の平山京幸氏、スギノマシン 精密機器事業本部長の酒井英明氏[クリックで拡大]出所:スギノマシン

⇒その他の「工作機械」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.