問い合わせデータを事業成長につなげよ! 製造業の具体的事例と併せて解説間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(22)(1/4 ページ)

コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第22回のテーマは問い合わせ分析の事例紹介とその手法解説だ。

» 2025年01月29日 07時00分 公開

 受託加工の製造業が成長を遂げる上では顧客の声を正しく捉え、それに基づいた戦略を立案することが欠かせない。ただ、受託加工の特性上、他社より一歩抜きんでている点を明確にすることが非常に難しく、自社の強みや差別化要因を見いだせない企業も多い。

 しかし、そのような状況において「問い合わせ分析」は、顧客のニーズや課題を把握し、新たな事業機会を見つける非常に有効な手法である。顧客の実際の声を集めることで、自社の強みが明確になり、新たな方向性が見えてくる。本記事では、問い合わせ分析の重要性と具体的な事例を通じて、どのように企業が事業成長を実現しているのかを紹介する。

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事例紹介(1):富士産業

 新規事業として製作金物事業を立ち上げた富士産業は、顧客の反応が特に良かった真ちゅう材質に着目した。ただ、ユーザーがより注目していたのは加工素材としての真ちゅうというより、その金色の風合いであった。そこで、ユーザーの求める機能や特徴を再定義し、真ちゅうの溶接やエイジング技術を導入することで、独自性を高めた事例だ。

真ちゅうのエイジングには独特の魅力がある 真ちゅうのエイジングには独特の魅力がある[クリックして拡大] 出所:富士産業

 真ちゅうは使用することで徐々に色合いが変化し、深みを増していく。はじめは明るい黄金色から始まり、あめ色、ダークブラウン、最終的には墨黒へと変わる。この経年変化の過程は、真ちゅう製品に特有の風合いを与え、使用者に自らの手で育てる喜びを提供する。

 このエイジングの魅力に着目した同社は、経年劣化を意図的に発生させ、劣化を止め、さらには輝きを取り戻す技術を習得した。これらの取り組みにより、顧客のニーズに応える製品を生み出し、競争力のある製品ラインアップを実現することで、事業の拡大に成功した。

真ちゅうのエイジングの過程 真ちゅうのエイジングの過程[クリックして拡大] 出所:富士産業
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