問い合わせデータを事業成長につなげよ! 製造業の具体的事例と併せて解説間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(23)(4/4 ページ)

» 2025年01月29日 07時00分 公開
前のページへ 1|2|3|4       

2:ニーズの背景を理解する

 顧客が問い合わせを行う理由を明確化することで、適切な提案が可能になる。問い合わせの背景は、以下の3つのパターンに分類できる。

2.1:問題解決型

  • 「この部品が現行の仕様で壊れやすい」
  • 「既存の加工業者が対応できない」

2.2:コスト削減型

  • 「現在の加工コストを下げたい」
  • 「材料を効率的に使いたい」

2.3:新規開発型

  • 「この技術で新しい製品を試作したい」
  • 「他社では断られた仕様を実現したい」

3:失注理由と受注理由の分析

 顧客が受注/失注を決定する要因を明らかにする。

  • コスト:競争力のある価格が提示できたか。
  • 技術:特定の要求に応える技術があるか。
  • 緊急性:納期や対応スピードが十分であったか。

4:分析の切り口を活用する

4.1:顧客ニーズの把握

 特定の加工方法や材料など、頻出するキーワードからニーズを特定

4.2:自社の強みの分析・差別化要因

 受注になりやすい案件とそうでない案件を比較する。自社の不足点による失注があれば、その要因を明確化する。

4.3:ターゲット市場の理解

 どの業界や製品に需要があるかを特定する。

ChatGPTなどAI活用による作業負担軽減の検討を

 上記の分析手法では、データ量の増加に比例して必要な時間と労力も増大する。この課題に対し、ChatGPTなどの生成AI(人工知能)を活用することで、効率的な一次分析が可能となる。生成AIは大規模データから短時間で意味のあるパターンや傾向を抽出できるため、分析担当者の作業負担を大幅に軽減できる利点がある。

 しかし、実際に試してみると、データ量が多すぎる場合にはエラーが発生するケースもあり、まだ課題は残る。また、AIによる分析結果はそのまま利用するのではなく、最終的には人間の目で確認、判断する必要がある。

 また、問い合わせ分析を行う際には、機密情報の取り扱いにも十分注意が必要である。顧客名や連絡先などの個人情報を全て削除し、プライバシーを確保した上で分析を進めることが重要だ。

まとめ

 問い合わせ分析を活用することで、顧客ニーズを深く理解し、自社の強みを最大限に引き出すことが可能である。特に受託加工業においては、他社との差別化が難しい分、こうした体系的な分析が競争優位性の確立につながる。本記事で紹介した手法を活用し、さらなる成長を目指してほしい。

記事のご感想はこちらから
⇒本連載の目次はこちら
⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧

筆者紹介

小林正道
テクノポート株式会社 取締役

製造業のWebマーケティング支援を15年以上行っている。製造業への訪問実績は2000社を超える。幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規開拓営業の支援を行う。
『マーケティングスキル×Webスキル(SEO中心)×製造業に関する深い知識』
この3つのスキルを組み合わせることで独自の専門領域を作り、卓越した力を発揮する。
日本工業大学技術経営学修士(MOT)2023/3卒業。


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.