AI CAD時代の到来で設計者の本質的役割がより明確にMONOist 2025年展望(2/2 ページ)

» 2025年01月07日 07時00分 公開
[八木沢篤MONOist]
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AIでCADツールは、設計はどう変わるのか?

 実際に、CADベンダー各社が既に実装、もしくは発表しているAI関連機能を見てみると、次に使うであろうコマンドの予測や穴開けなどの繰り返し作業の自動化、作図支援、3Dモデルから2D図面の生成、「ChatGPT」のような対話型インタフェースによるヘルプ(専門的な質問にも回答してくれる)といったものが目立ちます。こうした傾向は、先の調査結果でも示されていた現場の声を反映してのことかもしれませんね。

AIによる図面生成(1)AIによる図面生成(2) 図5 ダッソー・システムズが「3DEXPERIENCE World 2024」で発表した3Dモデルからの図面化(AIによる図面生成)機能のイメージ[クリックで拡大] 出所:ダッソー・システムズ

 AI活用と聞くと、何か創造的な作業をAIにやらせる/AIに何かを生成してもらうといった考えが浮かびます。そのような活用の方向性がある一方で、人間が行っていたさまざまな/煩雑な作業をAIが支援(肩代わり)してくれるようになれば、作業の生産性/効率が向上し、その分、本来業務(より多くの設計案の検討や新規性の高い設計への挑戦など)に多くの時間を割けるようになる、といった考え方もできるでしょう。

自然言語で専門的な質問のやりとりができる「Autodesk Assistant」のイメージ 図6 自然言語で専門的な質問のやりとりができる「Autodesk Assistant」のイメージ[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 ただ、そうはいっても、競争力のある製品を生み出すための創造的な活動を推進する上で、AIの力を借りない手はありません。ジェネレーティブデザインによる最適形状の検討だけでなく、今日では、製品企画やコンセプト設計に生成AIを活用するケースや、簡単な家具などの設計が可能な生成AIツールなども登場しています。まだ期待値としてはそれほど大きくないかもしれませんが、生成AIを企画やデザインに取り入れる動きもで始めています。

Final Aimとヤマハ発動機の共創プロジェクトで製作された小型低速EVコンセプト「Concept 451」。デザイン案の検討に生成AIを活用したという 図7 Final Aimとヤマハ発動機の共創プロジェクトで製作された小型低速EVコンセプト「Concept 451」。デザイン案の検討に生成AIを活用したという[クリックで拡大]

 さらに、手書きのスケッチ(ポンチ絵)やテキストなどから、機能的な3Dモデルを生成するような技術の研究開発も進んでいます。こちらは人間の頭の中のラフなイメージから3Dモデル化するアプローチになるので、コンセプト設計における作業効率を向上させるものといえそうですが、その検討サイクルを素早く回せるようになることで、新たな設計案の創出にも役立つことでしょう。

オートデスクが研究開発を進めている、スケッチから3Dモデルを生成する「Project Bernini」 図8 オートデスクが研究開発を進めている、スケッチから3Dモデルを生成する「Project Bernini」[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 もちろん、AIが人間の設計者に完全に取って代わることはありません。いくらAIが優秀でも、導き出したデザインや形状に対する設計面での良しあしや、製造性がきちんと担保されているかなどの最終的な判断は人間がやるべきことです。あくまでもAIは人間の創造性を補完するパートナーのような存在だといえます。

 つまり、これから先、AIと共存した設計開発環境が当たり前になっても、人間がAIのアウトプットを判断する以上は、設計/製造に関する知識や経験、ノウハウはこれまでと同様に求められ、より一層、設計者の本質的役割が明確になると考えられます。

まとめ

 ここまで、設計開発現場におけるAIに対する考え、CADツールに実装され始めているAI機能、AI時代における設計者の在り方について触れてきました。

 今回の新年展望の起点となったCADツールの話題に立ち返ってみますと、確かにAI活用の波が訪れており、成熟した業界に変化をもたらそうとしていますが、CADベンダー各社が共通して目指している方向性は一貫して「より良い設計の実現」にあると考えます。その目的を果たす手段として、各社しのぎを削ってAI機能の実装や研究開発を進めているのです。2025年も引き続き、設計開発環境とAIの関係性についてウォッチし、読者の皆さまにとって有益な情報を発信していきたいと思います。

 また、本稿では深掘りしませんでしたが、AI活用の下地となるデータの生成や蓄積の基盤となり、さまざまなアプリケーションを連携し、設計だけでなく、解析や製造、マーケティングといった領域、あるいは他業種にまで提供価値を広げるプラットフォーム戦略の動きも一緒に見届けていきたいと考えております。

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