最後に、65歳以上の高齢世代の就業率についても見てみましょう。日本では近年高齢世代の労働者が大幅に増加しています。少子高齢化は先進各国共通ですが、中でも特に高齢化の進んでいる日本は、国際的にどのような状況にあるといえるでしょうか。
図5が65歳以上の高齢世代(男女合計)についての就業率の国際比較です。日本は25.3%で、韓国、アイスランド、ニュージーランド、メキシコに次いで先進国で5番目に高い水準となります。
米国やカナダも比較的高いですが、イタリア、フランスが極端に低いのも印象的ですね。特に高齢化の進む日本はそもそも高齢世代の人口比率が高いですが、65歳以上の4人に1人が働いていることになります。高齢世代で働く人の割合が、こんなにも高いのですね。
時系列で見てみると、各国とも2000年代にかけて低下傾向にありましたが、その後はいずれも上昇傾向に転じているのが興味深いですね。日本も低下傾向が続いていましたが、2012年ころから急激に上昇しています。
各国で少子高齢化を受け、働く高齢世代の割合が高まっているように見受けられます。とはいえ、主要先進国では日本と韓国の水準が突出しているのが印象的です。
特に日本は最も高齢化が進んでいて、高齢世代の就業率が高いわけですから、就業者全体に占める高齢世代の割合も大きいことになります。
図7が労働者全体に対する65歳以上の高齢労働者の割合を計算したグラフです。日本は2021年で14%近くに達していて、他の主要先進国と比べるとかなり高い水準となります。フランス、イタリア、ドイツが2〜3%、イギリス、カナダが4%程度、米国が5%程度と比べると大きな違いがありますね。日本は高齢の労働者が多いという特徴もありそうです。
今回は、人口に対する就業者の割合である就業率について国際比較をしてみました。他国と比べることで、日本の特徴がよく分かったのではないでしょうか。まとめると、日本の労働者は次のような特徴があるようです。
日本は少子高齢化が進み、現役世代の労働者が減っていきます。これまでは高齢世代や女性の就業率が高まる中で、労働者数は一定範囲内で推移してきました。今後は、本格的に労働者数の減少局面に入っていきそうです。
今回のデータでは、これ以上就業率を上げて労働者数を増やしていくのは難しさがあるということが確認できたと思います。労働生産性を高めて、より少ない労働者で多くの付加価値を稼いでいけるか。課題先進国といわれる日本がこれから本格的に向き合うことになるテーマです。
⇒記事のご感想はこちらから
⇒本連載の目次はこちら
⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら
小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.