連続体シミュレーションと機械学習で液晶の3次元秩序構造の形成を解明研究開発の最前線

九州大学は、液晶の3次元秩序構造の形成メカニズムを解明した。連続体シミュレーションと、機械学習に基づく局所的な秩序構造の判定を組み合わせ、ソフトマテリアルの分子の集合体における構造転移を解析した。

» 2024年12月17日 11時00分 公開
[MONOist]

 九州大学は2024年12月3日、産業技術総合研究所との共同研究で、液晶の3次元秩序構造の形成メカニズムを解明したと発表した。連続体シミュレーションと、ML(機械学習)に基づく局所的な秩序構造の判定を組み合わせ、ソフトマテリアルの分子の集合体における構造転移を解析した。

 今回の研究では、液晶が3次元的な秩序を示すコレステリックブルー相と呼ばれる構造のうち、立方対称性を持つBPIとBPIIに着目した。4本の線欠陥がジャンクションを形成するBPIIは、温度を低下させると線欠陥が直線状のBPIに構造転移し、双晶構造を示す。

キャプション (上)コレステリックブルー相のBPI(左)とBPII(右)の構造。単位格子(黒枠)と線欠陥(黄色)の配置を示している。(下)BPIが形成する双晶構造。点線(双晶面)のところで2つのBPIの格子がつながっている 出所:九州大学

 研究グループは、分子が集合体として示す秩序を定量的に秩序変数に表す連続体シミュレーションと、分子集合構造学習パッケージ「MALIO」による構造判定を組み合わせ、BPIIからBPIへの構造転移の解明を試みた。

キャプション 分子集合構造学習パッケージ「MALIO」の概念図[クリックで拡大] 出所:九州大学

 その結果、まず、BPIIに含まれる線欠陥のジャンクションが切れ、向きが揃ったBPIの小さい領域が生じた後、それとは異なる向きのBPIの領域が隣接し、双晶構造を形成することが明らかとなった。

キャプション (上)シミュレーションで得られた4本の線欠陥からなるジャンクション(左、2つの図では見る角度を変えている)と、ジャンクション切断後の様子(右)。赤線はジャンクションが切断した方向を強調したもの。(下)BPIIからBPIへの構造転移の時間経過。グレーの線はBPIIを構成する線欠陥。3色の線はBPIを構成する線欠陥であり、色の違いは単位格子の向きの違いを表す[クリックで拡大] 出所:九州大学

 連続体シミュレーションと機械学習を組み合わせた手法は、汎用性が高いことから、ソフトマテリアルに限らず、多様な秩序構造の形成や転移に適用できると期待される。

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