東京大学と九州大学は、疎水性分子骨格と親水性固体表面の間に働くファンデルワールス力を利用した、堅牢性とセンシング感度を両立する人工嗅覚センサーの動作原理を実証した。
東京大学は2024年11月1日、疎水性分子骨格と親水性固体表面の間に働くファンデルワールス力を利用した、堅牢性とセンシング感度を両立する人工嗅覚センサーの動作原理を実証したと発表した。九州大学との共同研究による成果だ。
開発した人工嗅覚センサーデバイスは、単結晶酸化亜鉛ナノワイヤに疎水性の長鎖有機分子であるODPAを修飾した仕様だ。ノナナールガスのセンシング試験から、このデバイスはODPAを修飾していない単結晶酸化亜鉛ナノワイヤセンサーと比べてセンサー回復時間が劇的に短縮し、センサーの堅牢性が大きく向上できることが確認された。なお、センシング感度はODPA修飾により低下していない。
次に、ODPA修飾による酸化亜鉛ナノワイヤセンサーのセンサー回復の高速化機構を調べた。その結果、ノナナールの酸化反応後の分子であるノナン酸が、酸化亜鉛表面に蓄積することでセンサー特性が劣化することが明らかとなった。
一方、ODPA修飾した酸化亜鉛ナノワイヤセンサーでは、ODPAのアルキル鎖と酸化亜鉛ナノワイヤ表面が強く相互作用し、ノナン酸が酸化亜鉛表面でエネルギー的に不安定な状態となることが示された。
これらの結果を基に、不安定化されたノナン酸が速やかに酸化亜鉛表面から脱着し、センサー回復速度が上昇しているセンシングモデルを提案した。
従来の人工嗅覚センサーの研究では、ファンデルワールス力の寄与は小さいと考えられていた。今回の研究で示されたセンシング感度と堅牢性を両立した分子センシング機構は、根本的に機構が異なる新しい人工嗅覚センサー動作原理の実証となる。
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